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古田:例えば大企業に入ったとして本業じゃないところで研究をしていた時に、もし10年後、明日資金繰りが厳しくなって研究をやめなきゃいけないとなった時、優秀な人材だったら会社も本業をやれと言うじゃないですか。その本業に自分がモチベーションをどれくらい感じられるかと考えた時に、自分はどっちにしても辞めるだろうと思って。そうしたら安定さとか特に変わらないのかなと思いました。

瀧口:大企業の論理に振り回されること自体が不安定ということですね。

古田:そうですね。

瀧口:あらゆるスタートアップがある中で、どうしてGITAIに入ろうと思われたんですか?

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古田:きっかけはリンクトインというサービスがあって、そこで中ノ瀬(翔)社長からメッセージをいただいて。僕はもうその時一心不乱に研究をしていたので返信もせずに放置していたんですけど、僕の研究室の先輩に当たる上月(豊隆)さんという今CTOをやっている方がいて「古田、面白いことやってるから見に来いよ」と言ってくれて。

断ったりもしていたんですけどたまたま見に行ったところ、その時はまだプロトタイプの初期の段階で大きさも小さかったんですけど、やっていることとやっている人がすごくて、世界で見てもピカイチの人を集めようとしていて、かつ社長がこんな小さいロボットしかないのに宇宙でやろうとしているというのを聞いて、すごいなと思って興味を持って。そのまま博士の研究に戻りましたが、いざどこに行こうとなった時に一番魅力的だったのがGITAIでした。

瀧口:周りの反応が気になりますけど、ご家族はどうでしたか?

古田:家族は田舎の普通の家庭なので、特に大企業からスタートアップということでいろいろ言われましたけど、そこは押し通しました。

瀧口:奥様もいらっしゃるんですよね。

古田:奥さんは「楽しい方に行けばいいんじゃない」と。割と軽い感じで(笑)。

村山:理解がありますね。

瀧口:よく嫁ブロックみたいな言葉もありますよね。

村山:大体反対されるという話を聞きますけどね。

瀧口:そういうことはなかったですか?

古田:どうでしょうね。心の中ではどう思ってるのかはわからないですけど。

瀧口:楽しい方に行けというのは素敵な発想ですね。

古田:ありがたい言葉をいただいて。

瀧口:博士課程に行った方たちのキャリアって日本ではどうご覧になりますか?

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古田:メディアの人たちが言っているように、国際的な水準に比べるとやはり優遇はされていないのかなと思っています。というのも基本的には企業も日本だとSPIのように、一般的なジェネラルな人としてどれくらい価値があるか判断する指標みたいなものはあると思うんですが、博士課程のように今まで誰もやったことがないことについて論じるという経験をしてきた人に、そういう指標を当てはめるということは基本どうしてもできないと原理的に思っちゃうんですね。

海外の企業ではそういう人達を企業のカラーに染まらなくてもいいからとりあえず面白いやつだから入れてみる。そしてその会社に元々いる人たちと何かさせたら面白いことができて、そこからいいものをビジネスにしようというのが基本的なモチベーションになっているんです。一方、日本の企業って本業とする生業がすごくあって、それを洗練させてきてビジネスができてきたと思うんですけど、そこにこの人を入れてそれがどうより良くなるかとか企業の本業の軸で見てしまうところがあって、そこは割と僕は根本的な違いがあるかなと思っています。

瀧口:多様性という面でもそうですし、ジェネラリストを図る指標はあるけどスペシャリストをどう評価するか、余地があるといいなというところですね。

古田:博士課程に行っちゃったという表現は、アメリカや国際的な立場と日本の関係はそれぞれ一長一短だと思っていて。企業に入ってから本業が面白いと思う可能性もあるじゃないですか。だからどちらを選ぶかというのは人それぞれで、僕から見たら行っちゃったという感じですね。

瀧口:田村さんはどうご覧になりますか?

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田村:やはり古田さんがおっしゃっているように日本の博士課程は世界的に価値が低いというか扱いがひどいと思っています。海外の博士課程はお給料がもらえるんですよ。研究が仕事なので。日本の博士課程は学費を払って無給でやる。そもそもが「変なやつが変なことしてる」ということと、「世界の新しいことを発見するためにやってくれている」という価値観や考え方の違いが大きくて。その中で日本で博士に行くということは結構いろんな覚悟を持っている人が多いのかなとは思いますね。

瀧口:理系人材の育成という意味でも日本は遅れていますか?

村山:そうですね。例えばシリコンバレーなどを見ると、非常に優秀でアグレッシブな学生ほど起業したりスタートアップに参画したりしています。最近は日本でもそういう意識が高まっていて、お二人も象徴的な方々でしょうけど、昔であれば間違いなく霞が関のお役所や大企業に入っていた人たちがそうじゃない道を歩み始めている。そういう輪が広がっているということは、イノベーションや新しいことを起こすという意味ではとても大事なことだし、良いことだと思います。

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