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瀧口:古田さんはどの部分を担当しているんですか?

古田:ロボットは大きくハードウェアとソフトウェアに分かれるんですが、僕はソフトウェアの方を担当しています。遠隔操縦をするために先ほどカメラがあったと思うんですけど、カメラの他にもたくさんのセンサーがついていて、環境を把握するためについています。そのセンサーで情報を得て、地上のオペレーターがどういう信号を宇宙に送ったら宇宙空間を間に挟んでもロボットがISS(国際宇宙ステーション)で装置を壊したり宇宙飛行士を傷つけたりしないように安全かつ早く動作を行うことができるか、その知能の部分について研究・開発しています。

瀧口:地上にいる人が遠隔するメリットはどういうところにあるんですか?

古田:一番大きいのは宇宙に人が行く時の交通費の高さです。

瀧口:どれくらいかかるんですか?

古田:今の単価では1時間で500万円ほどかかっています。

瀧口:1時間500万円ってすごい額ですね。

村山:そうですね。相当な額ですね。

瀧口:それは主に何にかかっているんですか?

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古田:人を宇宙に上げることに対するコストです。人を上げたことによって、その人が快適に過ごせるように食料や救援物資を付随してあげなくてはいけないし、その人が宇宙で作業するために地上で様々なトレーニングをしなくてはいけない。他にもいろいろなコストがかかっていて、それをロボットで代替できればコストも減らして安全に作業を行うことができます。

瀧口:人を育てるにもコストがかかりますしね。GITAIのビジエネモデルについて田村さんの印象はいかがですか? お二人は初対面ですよね。

田村:私の研究室にもロボット好きな人が多いんですが、ロボットっておっしゃる通り期待を持たれている一方、人間って非常に優れた"アクチュエータ"で、安くいろんなことができるんです。転職したらまた新しいことを覚えることができますし、非常に優れた生物だと考えています。なのでそこにロボットを入れようとしてもすぐには置き換えられないというのは僕もそう思いますが、そういう中で人が危険で行けない所、費用対効果や投資効果が高い宇宙という領域で汎用ロボットを研究開発するのは非常に素敵だなと思います。

田村:宇宙の作業というのはどういう作業があるんですか?

古田:JAXAがロボットにやってほしいタスクというのが18タスクありまして、その内訳は冷蔵庫を空けたり中の柔軟物を取り出したり、他の宇宙船ドックに送る荷物の箱のような物をベルトコンベア、宇宙空間なのでコンベアが下にあるわけじゃなくて横に運ぶんですが、そのコンベアに設置したり、ドライバーで箱を外したり。結構何でもやります。

瀧口:古田さんは今年GITAIに入られたんですよね。

古田:はい。今年の4月からです。

瀧口:入社までどういった経緯があったんでしょうか。

古田:それまではずっとひたすら同じ研究室で変わらずロボットを研究していました。

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瀧口:そこでスタートアップに就職されたということで、他にもいろんな選択肢があったと思うんですが。

古田:卒業した後どうするのかと考えた時に、選択肢としては4つありました。今いる出身の研究室にそのまま残るか、海外のロボット関係のアカデミックな分野で頑張るのか、基本的にロボットは高いので大企業でしかできないんですけど、大企業でロボットを続けられるような所でやらせてもらうか、スタートアップに飛び込むか。最初は大企業でロボットの開発をさせてもらえる状況を作っていただいたので、僕みたいな博士課程まで行っちゃった人にとってはそこで自分が何ができるのか、そこに行ったら自分がどういうことを得られるのかが僕の中ではかなり重要でした。

当時その企業に入ろうと思ったのは、僕が行こうと思っていたロボットの部署がすごく魅力的で。「ロボットを絶対に社会に出してビジネスにしてやるんだ」という人たちが奇跡のように集まっていたんです。僕もその中の一員として働こうと思っていたんですけど、僕が博士過程で五里霧中で頑張っていたときに電話があって。なんとその部署の人たちがみんなスタートアップに行っていなくなってしまうという事実が分かりました。

瀧口:えー。

古田:そこに行きたかった大きな理由の一つがなくなっちゃったんです。

瀧口:やはり良いメンバーと一緒にやりたいという思いだったんですか?

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古田:それももちろんあったんですけど、部署のカラーですね。基本的には研究の部署なので、何年も世に出すということにとらわれずにロボットの性能を研究して成果を出せばいいと考える人もいれば、それだけじゃいつまでたってもビジネスにならないから、不況が起きた時に切られてもおかしくない、きちんとビジネスにしようという人もいて。人それぞれなんですが、僕としては後者の早くロボットを社会に出したいというチームが好きだったんです。

村山:スタートアップってものすごいパッションの熱い人たちが集まっているという意味ではロボットの研究をしたいという古田さんのような方にはいいのかなと思う反面、でもちょっと不安定というか、大企業とか国に付随する研究機関も多いでしょうし、今年やっていることが来年も再来年も10年後もできそうだという安定というキーワードで見ると、スタートアップってわからないですよね。