瀧口:資金調達はどうですか?
鈴木:外部資本は1円も入れていないです。
奥平:珍しいですね。それはなぜですか?
鈴木:僕らの会社は定款に定めているんですけど、配当は出資額を上限としてしか返還されないよと記載されているんです。なので1千万円の会社ですけど、1千万円以上は株主に戻ってこないという状態にしています。それにはポイントがあって、その生み出されたお金というものをまず1つは社会循環にしっかりと回すことが大事ですと。
どうしても株というのは会社が持っていることもありますが、最終的に個人資産になっていきます。その人たちがお金を持った時に素敵な人達はそれを寄付されたりということになるんですが、大体はその子供、孫となった瞬間にどんどんわけのわからないお金の使い方をして無くなりました、ということがよくあるじゃないですか。良い社会作りをするためのお金の回りがどうしても遅くなってしまう。自分たちの利益を社会に再投資できるような枠組みってなんだと考えた結果、こういうやり方になりました。
奥平:創業者から見るうまみってどうなんでしょう。例えば創業者利得って普通ありますよね。それが無いと思うんですけど、それはどうなんですか?
鈴木:基本的には社会課題の解決というのをいかにスピーディーにやれるか。ここがこのグループの仲間同士でやるメリットだと思っていて。あともう一つあるのは「めちゃくちゃ儲けたいですか?」という話になった時、例えばいろんな問題になっていますけど、社長の報酬とメンバーの報酬の差が今どんどん開いていて、これって違和感あるよね、という仲間たちばかりで。自分がすごく儲かるというだけではなくて、社会に再分配されるというところに思いを持ってやってくる仲間がほとんどで、というか全員なので。そういった形で頑張っています。
瀧口:スピードアップすることができるとおっしゃっていましたが、どうしてグループでやるとスピードアップができるんですか?
鈴木:やっぱり事業をする時の資金ですよね。社会課題を解決するためにビジネスをやるよっていった時に、そこに対していいよって言ってくれる人たちってまだなかなかいないんです。そうするとどうしても自己資金と借入でやらなきゃいけない、となった時に1千万、2千万という領域で始まります。ただそのスタートアップの仕方でマーケティングもなかなかできるわけでもないという中でやっていくと、うまくいかないで沈んでいくじゃないですか。普通のベンチャーもそうですよね。
そうした時に社会課題を解決したいという起業家がリソースが足りなくてうまくいかなかったというのは社会の損失と捉えた時に、大事なのは資金、そして事業を成り立たせるためのノウハウ、そしてもう一つは同じような志を持った仲間たち。それを一同にこのグループでしっかり出し合って共有して、共創していく。そしてお互いに頑張っていくという仕組みにしているわけです。
瀧口:利益をシェアしていくという考え方でしょうか。
鈴木:そうですね。もちろん各社は各社で先ほどお話したように独立体なので、各社の社長は自分の報酬も投資の内容もそして採用も全部決めています。なんですけど、その事業ができた時に「じゃあ誰が最初サポートしたんだっけ?」という話があって、それは自分が始める前に頑張って事業を作り上げてそこでお金やノウハウが貯まっていった。そしてこのお金を使って自分が成功できた。そうすると自分がもし上手くいった時にはそのノウハウやお金をもってして次の仲間を応援していきたい、という。「恩送り」という考えで僕らは運営しています。
瀧口:"恩返し"ではなくて、"恩を送る"と。
奥平:もらったバトンを次へつなげるイメージですね。
瀧口:「ペイフォワード」と言う言葉そのものですね。これって奥平さん珍しい形なんでしょうか。
奥平:あまり聞いたことないですね。