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瀧口:奥にあるのは何でしょうか。

鈴木:これはハーブティーで、授乳期のママ向けになります。日本で製造しているんですけど、原料になるハーブをミャンマーで生産しています。僻地の貧困の小規模な農家さんたちにハーブを作っていただいて、彼らが貧困で苦しんでいた状態からしっかりと生活が成り立つようにしているという流れです。

瀧口:なるほど。先ほど正社員で雇用してとおっしゃっていましたけど、正社員というのはボーダレス・ジャパンさんの正社員になるんですか?

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鈴木:いえ、僕らは今全部で29の事業がありまして、それをボーダレスグループとしているんですけど、各社はそれぞれ独立体で株式会社になっていて、仲間として一緒にやっているというイメージです。

奥平:資本を持っているんですか?

鈴木:資本はボーダレスグループのバッグアップを務めるボーダーレス・ジャパンという会社がありまして、ここがみんな出しています。

奥平:各社の経営者の方も自分でも出資されているんですか?

鈴木:いえ、それは1円も出していません。

奥平:では100%出資で子会社が29社あるという事業体になっているんですね。なるほど。

瀧口:事業を任される方というのはどういう方になるんでしょうか。

鈴木:今お話したように社会の問題をなんとか解決したいんだという思いを持って、それをビジネスというツールで実現したい、という社会起業家と呼ばれるような仲間たちになります。

瀧口:社会起業家という言葉がまだそこまで一般的に浸透していないような感覚があるんですが、社会起業家になりたいという方も結構いらっしゃるんですか?

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鈴木:そうですね、今世の中が結構変わってきていると思っていて、経済で世の中が回っている中で、どうしても儲けだったり組織が肥大化することでお客さんが見えなくなっちゃったり。そういう状態になっている中で、本来の在り方って何なんだという問いを始めていると思うんですね。その中で震災があったり、なんとか貢献をしながら働きたいという人が増えてきていると思いますね。

瀧口:やはり震災というのが一つ大きな転機だったんでしょうか。

鈴木:あったと思います。苦しい状況の人達に対して直に接する、何かしたい、と思うのが人間の持っている根本だと思うんです。それを思い出したというか、それって必要だよねって思う人達が本当に増えたと思います。

奥平:いろいろ商品があって資料を拝見すると、シェアハウスがあったり家電リサイクルというものもあると。これはそれぞれ29社の創業者の人がアイデアを持ってきて、事業化するのをボーダーレス・ジャパンとして手伝う形になるんでしょうか。

鈴木:そうですね。社会起業家が中心になって彼らが何を解決したいか、どうビジネスにつなげていくかということをサポートしながら一緒に作っていくイメージですね。

奥平:新興国や貧困だけがテーマかと思いましたがそうでもなくて。若者の就職支援、日本の規格外農産物のフードロスを減らすとか。結構幅が広いんですね。これは駄目だよ、いいよというまさにボーダーはどこにあるんでしょうか。

鈴木:それはあまり無いと言うと語弊がありますけど、一番シンプルなボーダーラインは社会問題であるかどうか。ここですね。いわゆる通常のビジネスということは僕らはやらないよ、という会社です。

瀧口:それはどうしてそう決められたんですか?

鈴木:もともと僕らが会社を創業するという時に、目的そのものが貧困を無くしたいという思いだったり。世の中で本当は働きたいけど働けない。働いていても全然つまらないという人がなぜかたくさんいる。こういった問題を何とかしたいよね、というところから始まっている。自分たちのやっていく領域というのはまさに社会課題の解決であるという所にフォーカスしたという。

奥平:驚いたんですけど、売上が49億円。50億近くあると。結構な規模感ですよね。利益はどういうイメージですか?

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鈴木:利益はもちろんたくさん出すように頑張っています。ビジネスというのはもちろん経済性、しっかりと収益を上げなきゃいけないということがありますけど、もう一つ社会課題の解決は継続性が本当に大事。そこに対してどれだけアプローチできるかというのが本当に大事だと思っています。そうした時にその原資になる資金というのを自分たちで生み出して自分たちで再投資できるという仕組みにしない限り、継続性や拡張性というものが阻害されてしまうので、しっかり利益が出る形で運営をしています。

瀧口:そこが今までのボランティアやNPOとは全く違う発想ですね。

奥平:利益の範囲内で次の30社目ができるようなイメージでしょうか。

鈴木:はい。ただしそれだけだとやはりスピードが出ないので、もう一つやっているのがいわゆる借入ですね。デット・ファイナンスもやりながら、やっています。