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山﨑:何があってもやり遂げたいという情熱を伝えました。さっきから話しているようなバックボーンなので、自分の力ではどうすることもできないということは自分でも初めから分かっておりまして。課題があったりやり遂げたいことがあったりした時は、とにかくいろんな人に情報を取りに行ったり、会いに行ったり話を聞きに行ったり。

そして、この人が力になってさえくれれば、という人がいれば必死になってお願いし続ける、というのを常にやり続けてきたんです。これは開発だけでなく資金調達の面でも知財の面でもそうですね。自分のやり遂げたい未来や実現したいところを話していって、いろんな人にお願いし続けていった。その中でも一番シンボリックなのがうちの角ですね。

奥平:いろいろな人を渡っていく中で角さんともつながって、手伝ってほしいというお話をされたんですね。

山﨑:僕の先輩の社長に台湾のストーンペーパーの品質で困っているという話をしたら、紙の神様がいるという話で。

瀧口:紙の神様ですか。

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山﨑:それで会ってみたら本当に神様みたいな人が出てきたんですよ。にこっと笑ってまるでマイナスイオンが出ているような。

瀧口:最初神様はどういう反応だったんですか?

山﨑:どうなんでしょうね。いろんなこと仰っていましたけど、「なんとかしてやらんと思って」ということは言っていましたね。

奥平:実際紙よりも重かったんですか?

山﨑:重かったです。1.5倍くらい重かったですね。

瀧口:そこからどうやって今の状態にされたんですか?

山﨑:軽くするというのは物流面でもそうですけど、ありとあらゆるところで絶対必要なんです。紙ってキロ当たりで価格が決まるんですけど、同じ1キロでも全然枚数が違うんですよね。やっぱりここを解決しなくてはダメだということで、うちの角の技術で、シートを作る時にシートを引っ張るんですが、その時に空気を間に入れていって軽くするという技術を開発したんです。そうして通常の紙と同じ比重にしたんです。

奥平:ではこれはミクロのレベルで言うと、気泡が間に入っているんですか。

山﨑:そうなんです。

瀧口:それは角さんはすぐに思いついたんですか?

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山﨑:それが一番良いということで、それを均一にするのが一番大事だと。空気を入れて引っ張る速度ですとか、力加減も調整していきながら、紙と同じ比重にして安定生産をしていく技術開発をしたんです。工場を作るまですごく大変だったんです。だけど冬の寒い時に試験しているラボとかで本当にじーっと(角が)眺めているんですよね、シートが出てくるところとか、品質のチェックとかして。うまくいった時といかなった時と表情も違いますし。僕のお金も底をついてくるんですけど、この人の夢を叶えるためにこれは諦めちゃダメだと思うくらい、情熱家ですね。

瀧口:ではその角さんの情熱とご自身の情熱が出会って、化学反応が起きたと。

山﨑:それは絶対あったと思いますね。

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奥平:でも実際工場を作りたいと思われても先立つものがないとできないわけで、最近でこそスタートアップ企業の資金調達環境って良くなってきていますけど、ちょっとこれは毛色が違いますよね。ITでもないですし。

山﨑:僕らがやったのはリーマンショック以降で、何十億円も必要なので、こんなリスクマネーは集まらないといろんな人に言われて全然集まらなくて。僕は20歳の時に起業して幾分かの蓄えがあったのでそれで開発したり会社を回したりしていたんですけど、それも底をついて。どうしようもない状況になってきたんですけど、経済産業省がイノベーション補助金と言って、僕らみたいな先端技術を実証評価するために、最大で設備の三分の二まで補助してくれる制度があって。それでギリギリのところで採択していただいて。

この日本の国が後押ししてくれたということで、僕はもう一度いろんな人の所を回って。仲間の経営者の方々が「そこまで言うなら」と少しずつ出資をしてくれたんです。それで20億円資金を集めて工場を作りました。

瀧口:経産省が辛い時期を救ってくれたんですね。

山﨑:「あれがなければどうなっていましたか?」って聞かれた時に、諦めるつもりはなかったんですけど、このスピードで我々の会社がこういう状況でこうなっていることはあり得なかった。経産省だけじゃなくていろんな方に助けてもらってここまでやってこられました。

奥平:その時点で角さんは会長になられていたんですか。

山﨑:入っていましたね。うちの会社が素材開発をスタートする時に顧問から取締役会長になっていただいて。

奥平:やはりそれだけキャリアを積んでいられる方が入っていたというのも大きかったんでしょうか。

山﨑:そうですね。あの方を中心とした開発チームが逞しかったです。

瀧口:角さんがいろんな方を連れてきてくれたりしたんですか?

山﨑:そうですね。大学とか企業とか。

瀧口:そういった方のサポートがあって、でもそれを集められたのはご自身の力ですよね。

山﨑:僕はお話したようなキャリアなので、とにかくいろんな人に同じ船に乗っていただいて一緒に夢見てもらおうということですね。