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奥平:そのおそらくあらゆる産業が飲み込まれていくという中において、ずっと言われていたことですけど、究極的に何が重要かというと支える人材ですよね。テクノロジー人材もIT人材も足りないと言われ続けていますけど、何らかのキャッチアップというか、せめてこれ以上劣後しないように何か方策はありますか?

村上:データサイエンティストとか26万人のAI人材という話になると、コーディングができるとか、線形代数と統計数学がちゃんと分かって、みたいなことだろうと思うんですけど、そうじゃないんですよね。それをまったく心得てなくてもいいんです。どういうものだということのセンスというか、それはいろんな学び方がありますから。

それこそ学びということに関しても、レイヤー構造なわけです。数学者でまったく未知の分野を開拓するレイヤーもあるでしょうし、そうじゃなくてそれをどう応用していくかという分野で分かりやすい仕組みを考えている人もいるでしょうし。そこも分からないまま、何か道具立てをうまく使って自分の仕事をより効率的にしようとする人もいるでしょうし。

ですからあまり、これが出来る人みたいなことではなくて、日本社会に限る必要はないんですけど、人類社会がまだ解き切れていない、分かりやすく言うと生活の仕方がもう一段楽になるよねとか、こんなことができるとエンタメももっと楽しくなるよねとか、そういう風なことの発想が豊かで、しかしその道具立てとしてはこんな道具立てがそろっていると心得ているということが大事なんですね。どうしてもこれができる人というのももちろんいるんですけど、その方々を獲得する、育成することにだけ集中するのもいかがなものかなという感じがします。

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奥平:わかりました。まさにその人材というところで言うと、これまでのテーマともかぶると思いますが、テックジャイアントみたいなところが優秀な人材を持っている。そことどう向き合っていくかというのが今後より問われてくるような気がしているんですよね。

ここしばらくで言うとアメリカの司法省がテックジャイアントを調査するという話もことですが、日本でもそこに関して言うとポジティブな見方と、ややもすると警戒しなくてはいけないという見方と相半ばしているような気がしますが、日本の成長・発展という観点で見ると、どう今後向き合っていけばいいんでしょうか。

村上:別の新聞のインタビューで、私が3月頃「GAFA叩いている場合じゃない」と言ったんですが、なぜそんなことを言ったかというと、大体の人が(GAFAに対して)きちんと法人税払ってないじゃないかと。そこは法人税法上の問題であって、GAFAの問題ではないんですよね。GAFA側のマネジメントとしては、払わなくてもいい法人税を払ったら逆に株主訴訟なんですよ。善管注意義務違反ですからね。

じゃなくて今回G20でユーザーベースの徴税、国民国家がそこに存在するユーザーの数ベースで徴税できるという方向性みたいなものが完璧に意思統一できたかは分かりませんけど、租税処置的な法が整ってきてますから、そちらのところはGAFAもルールさえできれば従っていくということになると思いますけど。それ以上に心配しているのは自由な動きを縛るという感じが一方であって、法人税の問題だけではないんですが。そうするとそれ自身が例えばこれから日本、北米、ヨーロッパで育とうとしている若い会社の手足も一緒に縛ってしまいますよというところがあるので、そこの自由度をいかに保証していくということを、行政当局は心がけるべきなんじゃないかと思います。

一方でGAFA自身もいろんな意味合いで、間接的に地域社会に対してご迷惑をおかけしているという自覚が始まっているわけですよね。例えば(アメリカの)シリコンバレーの住居費が高騰していて、市役所に勤めている人や公立学校の先生やお巡りさん、消防隊員が自分が勤めている市に住めない状況になっている。それはよろしくないでしょうということでいろんな企業が少し廉価な住宅建設みたいなことをマイクロソフトもシアトルでやっていると思いますし、Googleもやるような噂を聞いたりしておりますので、そこの自覚は出てきているんだろうと思います。

奥平:なるほど。あちらも考え方変わっている部分もあるので、日本もそろそろ叩くだけというフェーズはおしまいにした方がいいと。

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村上:日本においても大きなサイズの会社になってきたわけですから、全世界的にもそうなわけで。そこに対して社会的な責任は十分今の経営陣は自覚した上で、最近ではSDGs(持続可能な開発目標)など言われますけど、それよりも前からGoogleはESGということで、Environment(環境)、Social(社会)、ガバナンス(Governance)ということについてはしっかりと配慮した経営を心がけておりましたのでやってきてはいたんですけど、法人税の問題もあったのでなかなか皆さまにうまくアピールできてなかったと思いますね。

奥平:まだまだお伺いしたいんですけどそろそろお時間となりましたので、ここまでとさせていただきたいと思います。

瀧口:村上さん、本日は本当にどうもありがとうございました。

村上:ありがとうございました。

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