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2003年4月よりGoogle米国本社副社長兼Google Japan代表取締役社長として日本におけるGoogle全業務の責任者を務めた村上憲郎氏をゲストに迎え、「なぜGooglerは起業を目指すのか」「Googleが求める人材像とは」「GAFA」との付き合い方などについて聞く。聞き手は奥平和行日本経済新聞社編集委員。

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瀧口:「なぜGooglerは起業を目指すのか」と題しましてご登壇いただきますのは前Google日本法人名誉会長で現在は村上憲郎事務所の代表取締役、村上憲郎さんです。ではここからは奥平編集委員と村上さんでお届けさせていただきます。よろしくお願いいたします。

奥平:よろしくお願いします。大変涼しそうな格好でお出ましいただきまして。

村上:ex-Googlerをテーマにした催しということで、私は夏はセルリアンタワーのオフィスで大体こんな格好していまして。こんな格好して出ていかないと「憲郎さんも年取ったわね」って後で言われそうなのでこんな格好してきました。

奥平:ありがとうございます。今まさにセルリアンとおっしゃいましたけど、セルリアンにオフィスを作ったのが?

村上:私が2003年の4月1日からなんですけど、それよりもちょっと前に弁護士さんが代表取締役をしながら日本法人はできあがっていたんですよね。7名くらいの方がすでにいたと思います。

奥平:今年またGoogleが渋谷に戻ってくるということで、節目の年かなと思いますけど。

村上:そうですね。感慨深いものがありますね。

奥平:最近でこそGoogleは日本でも就職したい会社ランキングの上位にいて人気企業になったわけですけど、当時そうなる手応えはありましたか?

村上:まず大学卒新卒採用というのを始めたのは2003年の4月1日から4、5年先だったように思いますから、当然比較するモチベーションもなかったのが正直なところですね。

奥平:今日そのex-Googlerということで卒業された方がテーマになるんですけど、当時Google Japanで(社員を)預かられる身としては、なるべく長く働いてもらいたいという考えで経営されていらっしゃったのか、むしろ外に出ても活躍できるようになってほしいという考えだったのか、いかがでしょうか。

村上:私自身が8社目か9社目がGoogleだと思いますので、数を正確に覚えていないんですけど。

奥平:正確に覚えていられないほど動かれているんですね。

村上:ですから1つの会社に勤めあげるということも立派なことではあるけれども、何かのきっかけで次のチャンスを求めていくということも大いにあり得ることだという思いを持っていましたので、どっちがいいよという比較級ではなくて、そういう方が当然出てくるだろうなということは思っておりました。

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奥平:Googleは今でこそ人材輩出企業という言われ方をしていますけど、アメリカを見ても相当Google出身の起業家の方が多い。日本でも数年遅れてそういう形になっていますけど、何がGoogleを人材輩出企業たらしめているんでしょうか。

村上:Googleが特別なことをしているからそうなるということではなくて、徐々に日本の会社もそうなってきていると思うんです。自分と会社の距離感や関係性が対等で、お互いに足らざるところを補い合っているという関係性で働くと。あまりよろしいことじゃないですけど、24時間のうち8時間働いて8時間寝て、あと8時間は好きなことをやるということにはならずに、ややもすれば10時間くらい働いてしまうということが常だろうと思うんです。そうなると生活のかなりの部分が働くことが占めていることになりますから、口幅たく言えば生き方みたいな。

働き方を選択していくという中に、自分の生き方を最終的には選択しているという側面がどうしても色濃く出てくると思うんですよね。そうなるとそのことから物事を判断していくというところに特徴があって、それが日本においても勤めあげるということに関する評価が、どちらかというと傾向的には高かったと思うんです。今はそうでもなくなりつつあるんじゃないかなと思っております。