「スタートアップ」が未来を創る――。話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

リサイクル産業は工場などへの設備投資がかさみ、成長軌道にのるまでには時間がかかる。スタートアップにとっては高いハードルだが、日本環境設計の岩元美智彦会長は周到な収益計画でその壁を乗り越えた。最近の海洋プラスチック問題も大きな追い風となった。この好機を逃さず、同社は海外での事業展開にも乗り出す。岩元会長は独自のリサイクル技術で世界をどう変えようと考えているのか。

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瀧口:今年の大阪G20(20カ国・地域首脳会議)でもエコの問題はかなり大きく取り上げられていましたけど、岩元さんも関わっていらっしゃったんですよね。

岩元:そうなんです。今回のG20は経済の問題と海洋プラ問題(海洋プラスチックゴミ問題)が大きかったと思うんですけど、その海洋プラ問題に弊社の技術や商品が関わらせていただきました。

瀧口:どういった形で関わられたんでしょうか?

岩元:その商品を持ってきました。こちらになります。

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瀧口:こちらは何でしょう?

岩元:G20の海外から来たお客様用のプレゼントのバッグです。

瀧口:G20で配られたんですね。

岩元:これに一部海洋ゴミが入っているんです。昨年の12月にNPOさん、NGOさんと海洋プラや川ゴミを回収して、それをPETなどの原材料にしてこの商品を作ったんですけど、海外の方もびっくりして、「こんな素敵なものができるんだ」って喜んで持って帰られたと聞いております。

瀧口:やっぱり一度分子の状態に戻して作っているから、色もきれいに出るということですか?

岩元:そうですね。発色性もそうですしいろいろな色に染められますから、条件によりますけれども思い通りの商品ができるんです。

瀧口:ほかにもG20向けに作られたものがあるということですが。

岩元:こちらです。ちょっと触ってみていただけますか?

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瀧口:スカーフですか?色が綺麗で手触りが繊細ですね。

岩元:これはファーストレディ用のストールです。海から生まれたストールと題しています。

奥平:これも海洋ゴミからできているんですか?

岩元:一部入っております。

奥平:なんとなく海っぽい感じがしますね。

岩元:カラーは海と空をイメージしました。

瀧口:まさか海洋ゴミが入っているなんて絶対に思いませんよね。すごい。本当に素敵です。

奥平:今日の服に似合いそうですよ。

瀧口:じゃあちょっと付けてもいいですか?なんて(笑)。見せていただきありがとうございました。では早速岩元さんの起業前のお話から伺っていきたいんですが、まず大学卒業後はどちらに所属されていらっしゃったんですか?

岩元:私は繊維商社におりまして、繊維の営業、企画をさせていただきました。

奥平:技術屋さんというよりは、どちらかというと事務屋さんになるわけですね。

岩元:そうですね。

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奥平:新品を売る仕事ですよね。そこからなぜ環境やリサイクルに関心が移っていったんでしょうか。

岩元:これもありがたいことに、私が30歳手前の時に容器包装リサイクル法という法律ができたんですね。あの時は家庭ごみの60%がプラ容器とペットボトルで、それを分別してリサイクルすると資源になる。だからリサイクルしましょう、という法律が制定されたんです。その時のプロジェクトに関わることができたんです。ペットボトルを集めている会社さんと連携して、糸を作って生地を作り、商社としてその生地を売っていました。循環ってすごいなと思っていたんです。

それから何年もやっていくと、「服はリサイクルできないの?」という質問を受けたりするようになって、自分でもできたらいいなと思っていたんです。そうしたら世の中にそういう技術がなかった。ないならば作るしかないなと。繊維だけリサイクルしてもなかなか難しいので、おもちゃや文具、その他も総合的に回さないと循環型社会はできないと思い、独立させていただきました。そして技術専門の髙尾(正樹)と居酒屋で何度も飲みながら「よし、やろう」ということでこの会社ができたんです。

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奥平:こちらの写真は何ですか?

岩元:現社長の髙尾と最初に賞を取った時だと思います。私が42か43歳。髙尾は大学院にいたか中退したかという時期ですね。異業種交流会で髙尾と出会って意気投合して。彼は科学の専門ですので、ビールのエタノールを目の前にしてエタノールができないか、という相談をさせていただいたんです。ビールってエタノールじゃないですか。エタノールを置いて、服を出して、「これでエタノール作れるよね?」って。

瀧口:面白いですね。

岩元:そしたら「簡単にできちゃうよ」って言うものですから、じゃあ会社作ろうってなりまして。僕が100万円、髙尾が20万円調達して作った小さな会社だったんです。