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瀧口:今は消費者もより良いものを求めますが、良いというのはただ高級ということだけではなくて、どう作られたかというところも見ていると思いますから、そのアパレル企業のブランド作りとしてもこういう所が重要になってきてはいますよね。

岩元:良い商品を作るのは当たり前なんですね。そこにちゃんとしたストーリーが必要で。自分たちの持ってきた服が商品になって、大好きなブランドの店頭に並んで、それを買いたいというニーズが非常に高いですから、そのお客様のニーズを具現化したいと思っています。

瀧口:大手と契約されていますよね。

岩元:そうですね。回収拠点もそうですが、アパレルといろいろな商品を作っています。

瀧口:イオンさんや無印良品さんなどですね。

岩元:回収をみんなでしていまして、スノーピークさんやアディダスさんもそうです。そういう所から回収をして、ようやくこういう素敵な商品が出来始めています。

瀧口:見せていただいてもいいですか?

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岩元:こちらのTシャツは"UTMF"、ウルトラトレイル・マウントフジと言って、世界で一番過酷なマラソンがありまして。

奥平:165kmって書いてますけど。

岩元:100マイルで165km。走れないですよね。

奥平:十分の一も無理です(笑)。

瀧口:「車じゃないですか?」っていう距離ですよね。

岩元:人間が走るんです。平坦だけならいいんですけど、山を駆け登ったりしなくてはいけないので大変ですよね。このTシャツはその時の公式グッズとして作りまして、海外の方からも非常に好評でした。

瀧口:これは服から服にリサイクルされたものですか?

岩元:そうです。

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瀧口:ちょっと触ってみてもいいですか?(触ってみて)肌触りが柔らかいですね。

奥平:リサイクルということは綿じゃないわけですよね。

岩元:ポリエステルです。

瀧口:ポリエステルですか。

奥平:たしかにポリエステル100%って書いてありますね。

岩元:普通の人は触っても着てもわからないと思います。Tシャツは綿100%のニーズが高いんですよね。でも高機能のポリエステルのニーズも高い。どちらもあるといいじゃないですか。ということで開発したのがこの商品です。綿とポリエステルは重量感が違いますので、重量感を一緒にしたり。綿の構造は短くてポリエステルは長い糸を作るケースが多いんですけど、綿に近い糸構造にしておくと。それにポリエステルの高機能を入れますので、吸汗速乾。すぐ乾きます。

瀧口:綿の柔らかさとポリエステルの高機能が両立しているわけですか。

奥平:こういう環境ビジネスの話をする時に、企業の社会貢献というと耳障りがいい話ですので定期的に盛り上がりますけど、先ほど仰ったようになかなか長続きがしない。おそらく「環境負荷が本当に低いんですか?」という観点だったり、コスト面から見て本当にサスティナブルなんですか?といういくつか観点があると思うんですけど、例えばこの繊維を作るのは純正の素材、石油を油井から掘ってきて生成したものと比べた時の負荷、例えばCO2など見るといかがでしょうか。

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岩元:CO2で言いますと条件がいろいろありますが、石油を使わないという条件だと大体半分くらいに抑えられるというのが一つ。もう一つはコストですが、まだ小さいプラントですが、これがどんどん大きくなっていきます。年間5万トンを超えていきますと、石油を使った時の価格とそう変わらないんです。ですから環境に良くて価格もこなしていける。それと品質が良いので素敵な商品を作ることが大事なんです。

「リサイクルで頑張って作りました、だから買ってね」じゃないんです。素敵な商品をどんどん世の中に出していくことが重要。本当に再生なのか地下資源でできたのかわからないことが大事で、その素敵な商品をいろいろなメーカーと開発して店頭に並べ始めているところです。そうすると本当の循環がスタートするんです。

奥平:実際に地下資源のものとたいして差がなくなって来ると、いわゆる生分解性プラスチックみたいなものと比べると圧倒的に価格優位性が出てくるんでしょうか。

岩元:そうですね。全てはバランスだと思いますので生分解性も大事ですし、循環型社会のインフラを作ることも大事なんです。プラスチックがダメダメって言ったら今度紙に変更しようと思うじゃないですか。紙も使いすぎると森林伐採になりますので、本当に難しい問題です。ただバランスはとても大事だと思いますので、いろいろなバランスを組み立てながら社会が実装していけばいいなと思っています。

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