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瀧口:服からバイオエタノールを抽出して動かすというのはどれくらい難しいことなんでしょうか?いまいちピンと来ていないのですが。

岩元:どれくらい難しいかというのを他社と比べたことはないんですが、世界にはない技術です。

瀧口:世界で初の試みなんですね。

岩元:衣類からバイオエタノールを生産する技術もなかったですし、そのプラントを持っているところも世界で他にありませんから。

瀧口:燃料を作るということに特別注力されている会社、ということではないんですよね。

岩元:当初はバイオ技術の開発をしていて、次はケミカル技術というまた全然違うことをやっていて、そこに軸足を置きながら事業展開を加速させています。

瀧口:なぜ軸足を移されたんですか?

岩元:エネルギーは1回燃やしたら終わりじゃないですか。けれども何回でもリサイクルできるとやっぱり素敵だなと思っていますし、一番理想の形なんです。「いろんなものからリサイクルして商品ができました」というのはありますけど、使っても1回か2回なんです。もったいないじゃないですか。何回もリサイクルできるようにするためには、ケミカルという技術が必要で、今はそこに軸足を置いて事業展開をさせていただいています。

瀧口:ずばりどんなことをやっている会社なんでしょうか。

岩元:いろいろな物を循環させたいということで起業しました。今までリサイクルはリサイクル技術だけ開発したらいいとか、工場だけ持っていればいいということが多かったんですけど、それでは循環はできないということがわかりまして。回収拠点、消費者、技術、いろいろなメーカーが参戦するという、そうやって完全にぐるぐる回そうと思ったんです。

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そうすると弊社は循環の"ハブ"にならないといけないということが分かりまして。ハブになると消費者への啓蒙や回収拠点、技術開発、メーカーとの交渉、小売を全て調整しながら技術開発して投資してやっと全ての条件が揃ってぐるっと回るじゃないですか。今までハブがなかったんです。素材メーカーと回収拠点が話し合うこともなかったですし、消費者とメーカーがこんな商品が良いと話すこともなかった。ハブになっていくといろんな調整ができるようになって、ぐるっと回る。こういう循環のハブの会社になりたくて、創業させていただきました。

瀧口:技術開発にも注力されているということですよね。今までになかった技術というのはどういうものを開発されたんでしょうか。

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岩元:今このテーブルにあるんですが。

瀧口:これは何でしょうか?

岩元:ケミカル技術という技術がありまして、化学プロセスでリサイクルをしていきましょう、ということです。このペットボトルの繊維を、BHET(ポリエステルの構成分子)というものに変えて、さらにPETという樹脂に変える。この樹脂さえできれば、伸ばして糸にすれば服になるし、膨らますとペットボトルになるし、型に入れておもちゃや文具を作ることもできます。これを作るために技術開発をさせていただきました。この技術が優れているのは、何回もリサイクルができるということなんです。

瀧口:何回もということはどういうことでしょうか?服からまた服ができるということですか?

岩元:服もできますし、ペットボトルもできるし、おもちゃもできるんです。

瀧口:なるほど。

岩元:この原材料だけできれば、いろいろな物ができるんですね。

奥平:これは再生素材由来のものですけど、純正のものと同クオリティと言えるんでしょうか?

岩元:同等ですね。

奥平:リサイクルって繰り返すとだんだん劣化するじゃないですか。新聞紙が段ボールになって、最後トイレットペーパーになったり、低質になってきますよね。

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岩元:今まではそうだったんです。今までのリサイクルは物を見ていたんです。ペットボトルとかストローとか紙とか繊維とか"モノ"を集めてカットして水で洗って使うんです。これが世界中のリサイクル。ですから色がついていたり汚れが多少ついていたりしても使っていたんです。けれどもこのケミカル技術は、"分子"がくっついていますよね。それを1度解きます。これを解重合というんですけど、またそれを不純物を落としてくっつける、これを重合。解重合と重合を繰り返すわけです。

奥平:こちらの図ですね。

岩元:このプロセスで行うと劣化しないんです。

瀧口:分子レベルで分解するということ自体が、今までのリサイクルにおいてされていなかったと。

岩元:そうですね、物を見ないで分子を見ています。例えば燃えるものは有機物と言いますから基本的には"C"と"H"と"O"で出来ています。"C"は一生"C"で、"H"は一生"H"で"O"は一生"O"じゃないですか。だから通常物質というものは劣化しないんです。だからこのプロセスを何回もすることがすごく大事だということがわかってきた。そこの技術開発を中心にどんどんやってきたというわけです。

奥平:最初は先ほど見せていただいたバイオエタノール、1回燃やしたらおしまいというところから、まさに循環がぐるぐる回るようになったのがこの技術のおかげであると。

瀧口:燃料は1回使ってしまうとそれっきりだけど、さらに何回も使えるものということですね。

岩本:そうですね。さらに高みを目指した技術がこれになります。