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瀧口:動いているところ見たいですね。

いとう:見てみますか?パソコンで動画を出しますね。

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瀧口:しゃべるんですね。

奥平:音声認識もしますね。

瀧口:ラジオ体操の先生みたいな役割をしてくれるんですね。優しさにあふれている感じがします。

奥平:ロボットってもう少しSFチックなものを想像していましたが、見かけはぬいぐるみですもんね。

いとう:高齢者がSFチックなものを怖がるといけないので、見慣れたぬいぐるみで作りました。

瀧口:声はどなたの声ですか?

いとう:私の声を録音しました。

奥平:今これは開発でいうとどういうステージにあるんですか?

いとう:これは修士課程にいた時に企業とコラボして作ったもので、今はエクサウィザーズさんとコラボしてまったく違ったものを作っています。詳細はまだナイショ(笑)。もっともっと進化したものを作ろうと思っています。

奥平:これを使って高齢者の方と実証実験もされたんですか?

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いとう:しました。75歳以上の方と80歳以上の方がいるご家庭で使っていただいて。元々嫌だって言っていたおじいちゃんがいまして。貸し出したのはこの子ではなくてブルマをはいた女の子だったんですけど。

奥平・瀧口:(笑)。

いとう:その子を持って行った時に、おじいちゃんが「こんなの嫌だよ」っておっしゃっていたんですけど、おばあちゃんはやる気満々で。2カ月後に引き取りに行ったら、おばあちゃんが「この子が呼ぶ度におじいちゃんが『はいはい』って行くのよ」って。引き取ろうとしたらおじいちゃんが「この子がいなくなったら、俺もうスクワットできないよ」って言ってすごく残念がられて。

奥平:明らかに効果があったわけですね。

いとう:効果絶大でした。

瀧口:やっぱり話しかけてもらうことも重要なんでしょうか。

いとう:そうですね。そもそもロコモティブシンドロームを予防するのに重要なのはスクワットと言われているんですが、お医者さんが高齢者の方に「スクワットしてくださいね」って言っても自分ではやらないんです。先生が電話をしたりしてなんとかやってくれる。それをロボットにやらせたらどうかなと思って作ったんです。この子が1日3回呼び出して、目の前に来るまでずっと呼び続けるんです。うるさいから仕方なく行って、そこで3回必ずやってもらって、効果が出たという感じです。

瀧口:そもそも、なぜロコモティブシンドロームに着目されたんですか?

奥平:見ていらっしゃる方はそこが気になっていると思います。

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いとう:一番のきっかけは大学時代にゼミを決めた時に、3年生として入ってきた整形外科の先生がロコモをすごく懸念されていて、そこで「ロコモティブシンドロームって何だろう」と思っていた頃に、うちの父がちょうどガンで入院することになりました。入院して日に日に歩けなくなっていくんですね。

ある時、父が車椅子でお手洗いに行っている時に、「どんな感じで日々を過ごしているんだろう」と思ってベッドに横になったら、立てない人間が無機質な天井を見て24時間過ごすわけです。こんな切ないことはないなと思って。それならばなんとか自分の筋力があるうちはずっと維持できたらこういうことにはならないし、人生もう少し楽しくなるんじゃないかなっていうのが重なって、ロコモティブシンドロームを予防する研究をしようと思いました。

瀧口:本当に健康でいられる年齢と寿命がどんどん開いていますよね。

いとう:今の日本人でいうと平均で男性で約9年、女性で13年寝たきりになると言われています。切ないですよね。

瀧口:ロボットをこんなにかわいい形で作られたというのが、まい子さんの女性らしい視点という気がしますね。

いとう:たしかにロボットというと、いかつくてゴツゴツしていて近未来なイメージですけど、高齢者はそういう目が大きくて宇宙人みたいなものが目の前にあっても怖いんじゃないかと思ったんです。ロボットにはまったく見えないですけど、高齢者の方にとって違和感のないものがいいなと思って、こんな感じになりました。