奥平:今の話を伺って思ったんですが、高専に取材でお邪魔すると「こういうことできるんだったらスタートアップでも外資でも引く手あまただよ」っていう学生さんも、結構大手メーカーの地元の子会社とかに就職するじゃないですか。そこはもっと視野を広く持ってほしいですね。
渋谷:そうなんです。そこがやっぱり足りない所で、高専って地方のアクセスがあまり良くない場所にあって、ある種の閉鎖空間なんです。技術は学べるんですけど世の中のことを学べない。就職についても視野が狭いというのは絶対あると思っていて、「大企業だけじゃなくてスタートアップ、ベンチャーもあるよ」「自分で起業する道もあるよ」という選択肢を教えてあげる。あとはあまり外部にさらされることがないので、自分たちが学んでいることが役に立つのかあまり自信がなかったりするんです。でも実はすごいことをやっているということにみんなが目を向けてあげれば、輝けると思います。
瀧口:すごいんだよっていうことをちゃんと教えてあげることも大事なんですね。
渋谷:そうです。僕が高専の連携で母校で講演したりするんですが、最初に「みんながやっていることはすごいことだ」という話と、いろんな選択肢があるという話をして自信をつけてあげる。実際ビジネスコンテストでも勝ったりするので。
瀧口:視野を広げてあげるというのに関係するかわかりませんが、渋谷さんの本棚を長岡高専に設けたと伺いましたが(笑)。
奥平:"渋谷文庫"ですね。
渋谷:これは社員のアイデアで、僕すごく読書が好きなんです。よくおすすめ書籍100冊を社員にプレゼンしたりするんですけど、ある社員に渋谷さんのおすすめの本を高専の時に読みたかったって言われて。高専の図書館にそういうコーナーがあったら面白いんじゃないかと。そうしたらたまたま僕の同級生が高専で先生として働き始めたんです。それで彼に相談して図書館と連携してもらって、僕がおすすめの本7選、みたいな感じで置いてもらえることになりました。技術書ではなくて経済書的なものと社会の知識など、高専生が触れなさそうなものをあえて置いています。
瀧口:そして3年ほど前から新潟にフラーのオフィスを設けていらっしゃると伺いました。
渋谷:そうですね、ちょうど3年前です。これは僕の地元が新潟なのでやりたかったということもあって。これもきっかけは社員です。親が亡くなってしまった社員がいて、地元に帰りたいからフラー辞めなきゃいけないかなという相談を受けて。それじゃあ新潟に作ればいいじゃんって(笑)。僕も元々思っていたんですね。
新潟の人って就職する時に東京に来るけど、その後帰らないんです。でも地元に居続けたい人も結構いて。それを一番妨げているのは仕事。ITだと特に東京とか港区に集中しているので、新潟だと拠点が全くないんですね。なので新潟にあったらITの仕事が新潟でできて幸せなんじゃないかなと。そうしたらすごく人気で。
奥平:今新潟のオフィスはどのくらいいらっしゃるんですか?
渋谷:15人くらいですね。
奥平:結構いらっしゃいますね。
渋谷:最初は1人、2人でしたけどね。ニーズがあって。
瀧口:たしかにIT系の企業って都内に集中していますけど、そうでなきゃいけない理由ってあるんですか?
渋谷:僕は全然無いと思っていて。うちの本社も(千葉の)柏の葉ですし。むしろシリコンバレーとかはサンフランシスコに若いスタートアップはありますけど、GoogleとかFacebookはサンフランシスコから車で30~40分で。そういう場所に職住近接であるのが理想だったので、本社を東京に置きたくないと思っていました。新潟も同じで、Slackや電話会議でコミュニケーションを取れるので、まったく問題ないですね。
瀧口:ここは駅のすぐ近くですけど、降り立った時に空気がいいなと思ったんですよね。
渋谷:思いますよね。僕は空気が良くないと生きていけない生物で(笑)。名前「渋谷」なんですけど、渋谷はあんまり行きたくない(笑)。なので空気がおいしいところがいいですよね。
瀧口:すごい景色ですね。
渋谷:向こうに千葉大学の園芸系の学科があります。
奥平:ちょっとシリコンバレー風ですね。ダダッと開けている感じが。
渋谷:それをイメージしていました。
瀧口:すごく開けていて、あと緑の感じがいいですね。
奥平:シリコンバレーも元々果樹園ですもんね。緑があって。
渋谷:ちょっと煮詰まったら外へ出てリフレッシュして、またコードを書こうみたいな(笑)。