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奥平:そもそものお話なんですが、今何度かミスミというお話出てきましたけど、ミスミから新規事業のプロになるということはどう結ばれているんですか?

守屋:私はバブル世代で、バブルの時期に大学生だったんです。当時大学生が会社を作るというのが一定数あった時代で、私の先輩が会社を作ったのでそこに入れてもらいました。

奥平:それは大学生の時に。

守屋:19歳の時です。その会社がたまたまミスミの採用イベントを受託したんですね。私は当時大学4年生でかつその会社を引退していて、自分が先輩と一緒に作った会社が採用イベントを受託したので、半分サクラ、半分本当の該当者として採用イベントに応募してみたんです。具体的にはビジネスプランコンテストだったんですけど必死に作って応募しました。そうしたらそのビジネスプランコンテストで優勝させていただきまして。

奥平:サクラのつもりが優勝したんですね(笑)。

瀧口:すごいですね。

守屋:理由はすごく単純で、僕以外はみんな一つしか応募していなかったんです。僕だけが複数応募していて、僕は応募総数を上げたかったのが正直なところですが全体の1割が僕だったそうなんです。

瀧口:それはすごいですね(笑)。

守屋:当時審査員をしていた"面接の達人"の中谷彰宏さんから、新規事業は一分の一では成功しない。多産多死だと。みんな一分の一で申し込んでるところ、一人だけ1割を超えている。こういう人間が事業を生み出すんだ、というお話をしていただきまして。それが縁で(ミスミ創業者の)田口(弘)さんからお声がけいただきミスミに入社しました。

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瀧口:その後はずっとミスミで勤められていたんですか?

守屋:はい。10年間ミスミで新規事業をさせていただいておりました。

奥平:いわゆる本業の金型作成という部分には携わっていないんですか?

守屋:ミスミという会社には所属していたので、すぐそばで見ていたりまったく関わらないわけではなかったんですが、ほぼ10年間新規事業だけをしていた感じですね。

瀧口:それは新規事業のプロを作るということを田口社長は念頭におかれていたんでしょうか。

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守屋:そうですね。今から30年前入社した時に田口社長から言われたんですが、「我が国には経理のプロや法務のプロはいる。弁護士が弁護がうまいのは、弁護ばかりしているからだ。翻って我が国の新規事業を見ると、その事業がうまく行ったらその人間は事業の責任者として出て行ってしまう。2回くらい失敗したら二度とアサインされない。だから我が国の新規事業はすべからく初めての人間、素人がやっている。だから死屍累々なんだ。だからあんたは延々と新規事業をやっていなさい」と言われたんです。

そしたら本当に10年間新規事業ばかりだったという。その後の僕のキャリアって田口さんが当時作られたエムアウトという会社に転職することになったんですけど、そこでも10年、合計20年田口さんの元で、17回新規事業にアサインされたんです。

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奥平:たまたま学生起業の会社がミスミの採用イベントを受託していなかったら、今はこうなっていなかったわけですよね。

守屋:そうですね。

奥平:人生何があるかわからないですね(笑)。

瀧口:他にも田口社長からの教えはあったんですか?

守屋:これは自分自身が新規事業を重ねてやっている最中に言われたことなんですが、連続起業ではなくて、同時起業みたいなことを業務でやらされていたんですね。一度に一つではなく二つ走らせてみてどちらがいいのか。一つだと必ずこれ大丈夫です、としか言わないじゃないですか。両方同時に行って生存確率を見るということを田口さんは我々に認めてくれていたんです。その時僕が二つの事業を抱えている時に、「今君は二つの事業をやっていると思っているだろうけど、君は一つしかやっていない」ということを言われたんです。

瀧口:それはどういう意味ですか?

守屋:「経理の人間が三つの事業部の月次決算をやっている時に、私は三事業をやっているとはいわないだろう。君は新規事業を専門でやっているんだから、二つの事業を抱えてるのではなくて、一つの新規事業がたまたま二つの事業に見えるだけ。これはそう思いなさい」ということを言われたんです。そう思うと初めて共通項とか差分とか何かが見えてくると。「それぞれ違うと思った瞬間に量稽古にならない」と言われまして。

最初そう言われても、正直いや違うからって思っていたんですけど、20年間そういう指導下に置かれていると、だんだんそうなんじゃないかと思えてきて。今では新規事業は基本的には同じだなと、初見であっても既視感があるという感じはなんとなくしています。

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瀧口:一度見たことのある風景が毎回広がっていると。

守屋:そうですね。

奥平:時代背景や業種が違っていても、そこには何らかの共通項があると。

守屋:より正確に言うと、勝ちパターンが見えているわけではないんです。どうしたらうまくいくか正直いまだに僕はわからなくて、一生懸命頑張っていると時々うまく行くというのが正直なところ。でもこれはまずいかもしれないというのはだんだんわかるような気がしてきて。例えば一瞬窓が開いて、その窓の向こうの景色が本当はあるべきなのになかったり、本当はあってはいけないのに何かがあるみたいな。何かしらの違和感を察知してきたような気がしています。

奥平:そのあたりのお話をもう少し具体的に伺っていきたいところですが。

瀧口:続きは後編に伺います。ありがとうございます。

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