丸:(ドアを開けて)失礼します。
瀧口:お邪魔します。
丸:このように一部屋ごとに分かれています。
瀧口:何かいい香りがしませんか?
(ファーメンステーション代表取締役社長・酒井里奈)
酒井:この中で唯一良い香りの会社です。
丸:唯一なんて、他の会社に怒られちゃいますよ(笑)。
酒井:ファーメンステーションは様々な資源を、独自の発酵技術でみんなが使えるすてきなものに変えていく会社です。使っていない田んぼとか、りんごの搾りかすを発酵してエタノールを作ります。エタノールはすごく良い香りがします。消毒などに普通は使うんですけど、お酒っぽい良い香りです。
丸:飲んじゃ駄目なんですけど、飲みたくなるような香りですね。
酒井:香りの良いサスティナブルな原料ということで、これを使って化粧品や雑貨などを作るんですが、発酵するとカスが残ります。このカスもごみにするのではなくて化粧品の原料にしたり、にわとりや牛が食べてそのにわとりの卵でお菓子を作ったり、牛肉をホテルで売ったり、列車レストランのローストビーフになったんです。
瀧口:そこにつながるんですか。
丸:酒井さんは入居してからラッキーなことがたくさんあったんですよね。
酒井:本当に世界が変わりました。
瀧口:どんなことがあったんですか?
酒井:それまでは「市場が見えない」とか「それは事業になるんですか?」って聞かれることが多かったんですけど、ここでは皆さんが「すごく面白いですね」って励ましてくれるので自信がついて。そうするとお客様もついて買ってくださるようになったり、いろいろな案件をご紹介いただいたりしました。
瀧口:皆さんで楽しくワイワイ言いながら始められたんだなってことが伝わってくるんですけど、リバネスにはどういう方が実際に勤めていらっしゃるのか気になります。採用はどういうことを意識されてますか?
丸:僕は17年この活動をしていて、今活動と言ってしまいましたが、働くって今いろんな働き方があるじゃないですか。僕ら研究者って基本的に労働という概念が抜けちゃうんですよ。活動なんです。プロジェクトであり、活動。「自分が興味があるからやり続けたいんだから、ほっといてよ」って研究室にいるわけです。
原:たしかに研究者の方ってそういうイメージありますね。
丸:活動って活発に動いている状態のことで、脳が活性化していたり、ワクワクしている状態を活動って言うんですけど、活動って無限にできちゃう。ある意味危ないんですけど、リバネスも活動をしている状態なんです。なので労働という何か言われて辛いことをする、自分の力を使って人のために働くという形から、僕らは活発に脳を活性化させて好きな形で何かプロジェクトをやろうというのがそもそもの概念なんです。
なので科学技術の発展と地球貢献を実現する、というのがリバネスのビジョンなんですけど、これに関わる活動であれば全部やってきた。だから教育から始まって、スタートアップまで広がっちゃったんですよね。全部社員がやりたいといったからやっているんです。
原:今社員は何人くらいいらっしゃるんですか?
丸:リバネスというコアな部分には、シンガポールやマレーシアも含めて100人くらいいます。その他にもグループ会社が19社ありまして、ここまでをリバネスグループとして考えると大体288人の人が活動に参加しています。
瀧口:入社の面接を受けに来る人は研究者が多いんですか?
丸:コアの部分はMaster(修士)、Ph.D.(博士)ですね。みんな面接で目を合わせない。普通、採用の時ってみんな目を合わせて、ハキハキと「こんにちは」って言わないと採用されないですよね。だけどウチを受けに来る人は(うつむきながら)「こんにちは」っていう感じで目を合わせない。下を向きながら「僕は半導体のこういう研究をしまして」って、誰に話してるんだって感じなんですけど、めっちゃいい人ですよね。
原:その方がいいんですね。
丸:研究者は人には話したくないんです。物質に話しかけるというか。
原:それじゃあコミュニケーション能力というものは。
丸:完全に終わってますよね。
原:ない方がいいと。
丸:そういう人も、研究の対象物質とはコミュニケーションができているんです。自分が脳を活発に反応させている対象にはめちゃめちゃコミュニケーションが取れているんです。人と人の偽りのコミュニケーションは苦手ですが、真実のコミュニケーションは取れています。