「スタートアップ」が未来を創る――。番組がオフィスに足を運び、話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

リバネスグループの丸幸弘CEOはユーグレナをはじめ数々のスタートアップを支援する「創業請負人」。研究開発に時間がかかるモノづくり分野の起業家に、じっくり腰を据えて伴走するスタンスを貫く。支援のポイントは「もうけ」よりも、ワクワクするような「世界を変える研究」であるか否か。自らも研究者である丸CEOが、リバネスのユニークな起業ストーリーやその理念、研究者の魂について熱く語る。

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瀧口:今日はいつもの奥平さんがお休みのため、特別に日経ビジネス副編集長の原隆さんにお越しいただきました。原さんは「STARTUP X」ファンということで、どうぞよろしくお願いします。

原:よろしくお願いします。

瀧口:今日はセンターオブガレージというところに来ています。早速お話を伺ってよろしいでしょうか。

丸:どうぞ。こちらです。

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瀧口:ここはもともとガレージだったんですか?

丸:倉庫です。天井もこんなに高くなっています。

原:男子は倉庫ってワクワクしますよね。

丸:そうですね。Appleもそうですけどガレージからいろいろなことが始まっている。まさに"倉庫=ガレージ"ですから、日本もいよいよそんな時代が来るのかなと思っています。

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瀧口:こちらはリバネスグループCEOの丸さんについて書かれた日経産業新聞の記事です。ちょっと読んでみますね。『バイオやロボットなどを研究開発するスタートアップ企業で数十億円規模の大型調達が増えてきた。各社の来歴をたどると、一人の「創業請負人」にたどり着く。スタートアップ支援のリバネスの丸幸弘グループ最高経営責任者だ』ということですが、丸さん本日はよろしくお願いします。

丸:よろしくお願いします。この記事見るとなんだかすごい人みたいに見えますね(笑)。

瀧口:すごい人じゃないんですか?

丸:違いますね(笑)。

瀧口:こちらのリバネスグループはどのような事業をされているんですか?

丸:リバネスグループは検索してもよくわからないと思うんですが、こういったスタートアップ支援というのを最初からやっていたわけではないんです。研究者が集まって自分たちの研究をどうやって世の中に出そうかということをリバネス自身もやっていたので、いろんな方々から相談を受けるようになりました。そこからさまざまなスタートアップが集まるようになったという流れです。元々の創業は子供の教育なんです。

原:子供の教育というと、どういうことをされていたんですか?

丸:僕たちは研究者なので、研究が大好きじゃないですか。僕が大学院の時に新聞で問題になっていたのが、子供たちの"理科離れ"が深刻になっているということ。「このままだと科学技術立国はありえない」と書かれていたんです。一方でポスドク(ポストドクター)の問題といって、僕ら研究者が博士を取った後に就職先がない。「あれ?」って思いませんか?

まさにそのど真ん中にいた人間なので、悔しいじゃないですか。自分たちがこんなに毎日ワクワクしながら"世界初"を研究して作っているのに、なんかおかしいなと感じて。そこで「ちょっと待てよ、このワクワクを誰も伝えに行ってないぞ」ということで大学院生15人が自分の研究が一番面白いんだということを子供たちに伝えるために、最先端の受験とはまったく関係ない科学を出前して実験教室をするという事業がうちの世界初のプロダクトです。

原:それは今も続けていらっしゃるんですか?

丸:はい、続けています。

瀧口:子供に出前で理科を教えるというところからスタートして、こんなに人間関係がどんどん広がっていったんですね。

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丸:僕は理系なので経営とか分からないんです。最初大企業の会長さんにたまたま僕が子供の教育をやりたいという話をしに行ったんですが、「君面白いね、儲からないだろう」って。本当にまったく儲からないんですよ(笑)。

瀧口:それはどなたから言われたんですか?

丸:セコムの会長の飯田(亮)さんです。「僕は最先端の科学の出前実験教室をやってるんですよ」って言ったら「儲からなさそうだな」ってうれしそうに言われました(笑)。「ぎりぎりです、というか赤字です」って言ったら「儲からないだろうな。でも10年続けろ」って言われて。記事に応援団と書かれていますが、創業者の方々に教わってやってきたというのがスタートになっていますね。なのでとても大事な僕の先生達です。

原:10年以上続けてきたからこういう人脈ができたのかもしれないですね。

丸:人脈を作ろうと思ったというよりは、この今日本が置かれている子供の"理科離れ"とか、お金はたくさん余っているのに研究が全然活用されていない、イノベーションが起こらない、という課題を解決したくていろいろな人に話をしに行ったんです。「この問題はどうやって解決できますか」って。「僕やりますから手伝ってください」って言ったら、「君すごく面白いね」って言ってくださったのが会長さんたちだったんです。

他にもいろんな方に言ったんです。大学の教授にも文部科学省にも言ったんですけど、「難しいね」って言われて終わっちゃう。でも頑張れって言ってくれたのは会長さんたちでした。戦後まもなく焼け野原から何かを作ってきた方は分かるんでしょうね。たまたま後押ししてくれることになって、彼らから「丸っていうよく分からんやつがいるから、面倒みてやってくれ」って口コミで紹介してもらったりして。少しずつ広まっていった感じです。思いがなかったら「誰?」って言われた気がしますね。

原:どちらかというと技術を中心とした人脈だと思うんですけど、出資をしたり投資をしたりする先の共通項って何かあるんですか?

丸:僕、投資家みたいに言われることもあるんですけど、どちらかというと投資家というよりは事業家なんです。世の中にないものを作ることに興味があって、投資をして回収をするような感覚はまったくないんですね。お金を入れて事業に参加させてもらう感覚でやっています。なのでヴィジョンが一致する人じゃないと支援したくないんです。儲かりそうだなっていう話も結構来るんですが、それだけじゃなかなか財布の紐が開かない。気持ちの問題です。たぶん普通の投資会社だったら「儲かりそうだから支援するか」ってなるんですけど、逆ですね。「儲からなさそうだな。でもなんか世界を変えそうだな」って思うとお金を払って僕も知恵を出して技術を持ってきて、「さあやるよ!」って。それが僕の趣味ですね。