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奥平:今振り返って、うまくいかなかったことはどう総括しますか?

赤川:システムが間違っていたということではなく、マネージメントも含めてスマートフォン市場に変わっていく中で、日本的なゲームを押しつけてしまったと思います。

奥平:まさに流れとして当時日本国内はガラケーが全盛で、その上でDeNA、GREEは成功して、それを海外に持って行ってスマートフォンプラットフォームを作るためにパートナーシップを組もうとした流れですよね。

赤川:そうですね。DeNA、GREEはプラットフォーマーとして出ていこうとした中で、スマホではAppleの規制がより強くてそこがなかなか取れなくて。いろんな事情はありますが、いずれにせようまくいかなかったので申し訳なかったと思います。

瀧口:一番その時に学んだこと、強く感じたことは何でしたか?

赤川:失敗したのに何ですけど、日本人は全然やれると思いました。

奥平:やれるという手応えでしたか。

赤川:シリコンバレーに人材レベルで負けているとは思わなかったです。もちろん時々クレイジーにすごい人がいるのはシリコンバレーらしさですけど、平均的なレベルでは負けているとは全く思いませんでした。どちらかというと何をやるか、どうやるか。当時でいうとマネージメントの仕方に反省点・失敗点がたくさんあったので、次やるとしたらこうだろうなという仮説はたくさん持っています。

瀧口:マネージメントの仕方というのは、具体的にはどういうところですか?

赤川:例えばどこまで権限移譲するかです。そもそもエヌジーモコのケースでいうとスタートアップを買収した後、シリコンバレーでその会社をマネージメントしていくのはどういう難しさがあるのか、僕ら自身も無知だったということもあります。

瀧口:言語の壁もありますよね。

赤川:ありますね。

瀧口:そういう所をミラティブでは今後生かしていこうと。

赤川:はい。うまくいくかどうかはやってみないとわからないですけど、生かせるか生かせないかで言えばめちゃくちゃ生かせると思っていますし、あの時の悔しい思いは今回こそ・・・と思っているので、絶対にやりたいと思っています。

瀧口:まずは韓国やアジア圏からというところでしょうか。

赤川:そうですね。

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瀧口:先日ミラティブさんのオフィスに伺わせていただきましたが、社員の方皆さんとても和やかな雰囲気でしたね。社内の文化で何か気にされていることはありますか?

赤川:ミラティブは少数精鋭で世界に通用するプロダクトを作りたいと思っています。理想はFacebookに買収されたWhatsApp(ワッツアップ)という会社ですが、40人で作っているものがアクティブユーザー10億人。20年前だと絶対できなかったものが今はできる。「ガレージから世界へ」というところを一つの理想形として掲げているので、少数精鋭プロフェッショナルで良いものを作るということを意識しています。もう一つは「エモい会社」を作りたいと思っています。

瀧口:「エモい」っていう言葉最近流行っていますけど、どういう意味ですか?

赤川:感情が動かされるという言葉で、今は若者言葉でよく使われています。
ちなみにこれは音楽出身の用語なんです。90年代後半のパンクロックの一部が「エモ」と呼ばれていてそこから来ているんですけど、僕はそのジャンルが大好きだったという裏話もあります(笑)。

奥平:勉強になりますね(笑)。

瀧口:それでエモい経営。

赤川:はい。スマートフォンが出てきて個人にパワーバランスが移って、みんなやりたい仕事が選べる時代になってきたと思うんです。そうするとAIみたいなものが進化して誰でも同じ答えに行き着くということが出てきて、付加価値になってくるものは強い思いや意志、これをやりたいからこの仕事をしている、ということがどんどん重要になってきていると思っています。
"エモい"というのは一つの象徴的な単語だなと思いますね。ミラティブ社は部活みたいなノリで楽しくエモーショナルにプロフェッショナルとして良い仕事をするというチームです。

奥平:経営でそういうキーワードを思いつかれたのはDeNAにいた頃からですか?それとも起業してより強くなったんですか?

赤川:DeNAでもミラティブチームを独立で運営させてもらっていたので、ミラティブチーム自体は当時からエモいチームでしたが、外にこれだけ発信するようになったのは独立してからですね。

瀧口:実際にエモくするために気を付けていることはなんですか?

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赤川:「心理的安全性」というキーワードを組織運営上多用していまして、人がエモい話をする時って分かり合えないと思うと言わないんです。相手が受け入れてくれると思うから自分の気持ちをオープンにするわけで、旧来的な上司と部下の関係だと若者がエモい話をしないわけです。ただサービス自体は若いユーザーが多いので、むしろ若い感性が重要で。となると、いかに彼らに本当の思いをぶつけてもらえるか。心理的にどう安全な状況を作るかというのはすごく意識しています。

瀧口:どうやったら若い社員に安心してもらえるんでしょうか。

奥平:エモい経営の具体例はあるんですか?

赤川:「プレミアムエモイデー」というのを毎月やっていまして。

瀧口:プレミアムフライデーみたいですね(笑)。

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赤川:名前はネタっぽいですけど、要は月1回の全社の戦略共有会です。ミラティブは副業している人も多いので、月に1回みんな集まって飲みながら話をする会です。ただ特徴としては、全員が自己紹介と最近あったエモい話をするという文化があって、そうすると「うっ」って思う人もいると思うじゃないですか。でもそれを話しても許される空気がその部屋の中に充満していて、そうするとみんなどんどんプライベートの話をしだしてみんなで「エモいね」ってなってくるんです。部屋全体が教会のミサみたいな雰囲気で、魂が昇華されるみたいな。

奥平:ちなみにご自身が最近したエモい話は何ですか?

赤川:最近した話は・・・すごく真面目な話になっちゃいますけど、ちょうど独立1年だったので、「この1年いつもいいリーダーじゃなかったと思うけど、こういうところごめんな」みたいな話をしました。