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奥平:もうAIの方は随分採用されているんですか?

赤川:まだまだこれからですけど、とにかく面白いデータがたくさんあるサービスなんです。人がスマートフォンで何を触っているとか、ゲームをやっている時にどういう感情を乗せているかって三次元なデータなので、やりがいはありますし、強化ポイントですね。

瀧口:どういう感情を乗せているかというのはどういう感じなんでしょうか。

赤川:ゲームの画面のパターンって結構限られていたりするので、例えば今はやっている100人で生き残りが誰だっていうゲームで2位と表示されている時って、たぶん悔しいんですよ。その時に人がどういう声を出しているか、どういうコメントが来ているとか、全部の情報が僕らのサーバー上にあるので、それはすごく面白いデータだと思いますね。

瀧口:コミュニケーション自体のデータが取れるということですね。

奥平:当然VCのお金を入れられているので、将来的にイグジットというのもあると思うんですけど、まだ想像つかないと思いますが例えば仮に条件があえばDeNAが買うということもあるんでしょうか?

赤川:世の中あらゆる可能性は否定できないので、絶対ないとは言い切れないと思います。

奥平:そういうのが起きてくると(アメリカの)シリコンバレー的なダイナミズムがありますよね。

赤川:そうですね。エコシステムとして日本も次のステップに進んでくる兆候はあるなと思いますね。

奥平:なんでゲーム実況ってこんなに大きなマーケットになって、更に成長性が見込まれているんですか?

赤川:「プロ野球ってなんで大きくなったんですか?」という話に近いような気がしていまして。僕も昔は野球少年でしたけどもう全然野球をやらないというのを考えると、野球を見に行ったり、プロ野球を見ている人のうち実際本気で野球をやっている人って0.数%みたいな世界じゃないですか。あれはスポーツを見るという行為が市場になっているわけですよね。将棋の竜王戦みたいなものが昔から需要があって新聞で連載されたりテレビ中継されたりというのとある意味一緒で、みんながたくさん触れているエンターテインメントの周辺に、見る人が楽しいみたいなものがインターネットの力を使ってどんどんできているという流れだと思います。

奥平:人がゲームをやっているということに対して、人間はやっぱり興味があるということですね。

赤川:そうですね。

瀧口:それはeスポーツの文脈とも合致するんですか?

赤川:僕は大きく二つの流れがあると思っていて、どちらもマーケットがあると思うんですけど、一つはよりeスポーツ的なマーケット。これは興行の新しい形というか、例えばワールドカップみたいなサッカーうまいやつ集めると数十億人見ても楽しいというようなものが、eスポーツだと思っています。ゲームの世界一決定戦のような。もう一つがミラティブがやっている友達と一緒にゲームをやっている延長戦上、僕はこれを友だちのうちでドラクエ(ドラゴンクエスト)やっている感じというサービスコンセプトで表しているんですけど、ドラクエって本来一人用のゲームなんですけど、僕とか多分奥平さんとか人の家でドラクエをやったことあると思うんですけど、ずっとテレビ見てたわけでもなくて、ボスの時だけ漫画を止めて「ボスじゃん」みたいな。

奥平:そうですね。誰かがゲームをやっていた中で漫画を読んでいたことありますね。

赤川:あれってまさにゲーム実況的な感覚の源流だと思っていて、それが2019年だとスマートフォンを通じて「ボスじゃん」っていうのがコミュニケーションできるようになったという感じですね。

奥平:本来的にはニーズがあったと思うんですけどテクノロジーの限界があってできなかったものができるようになったと。

赤川:僕はそう思ってますね。

瀧口:なるほど。そもそもなんでミラティブのような世界を作ろうと思ったんですか?

赤川:まず前提としてインターネットで人と人がつながるということに僕自身が救われてきまして。僕はゲーマーでもあったんですけど音楽のオタクだったんですよね。中高生のまだインターネットが24時間じゃない頃に、チャットルームにつなぐと知らない大人が僕の知らない音楽をたくさん教えてくれて、翌日に昼飯抜いて中古CD屋に行くみたいな。そこで人生の幅がすごく広がって、その時にインターネットで出会った人たちはいまだに友達だったりとかその中に有名ミュージシャンだった人もいたり。
趣味と趣味のつながりがインターネットを通じて広がるというのを体験しているのでそういうサービスを作りたかったんですね。それをマーケットのでかいところでやると、同じゲームが好きな人たちが同じ場に集まって「それすごいわかる」とか「うまいね」というので仲良くなったり。そういうプラットフォームを提供している感じです。

瀧口:つながれる場を作りたいという感じですね。

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赤川:ミラティブという会社のミッションが「分かりあう願いをつなごう」というもので、"分かりあい"をやっている会社なんですね。人と人が分かりあえないという問題、孤独や自殺みたいな問題ってテクノロジーがこれだけ発展してもまだ人類が解決できていない課題だと思ってます。例えば食糧難で死ぬ人はめちゃくちゃ減っているけど、自殺する人はむしろ増えている。それは分かりあいの問題だし、北朝鮮と韓国の問題も突き詰めると分かりあえてないって問題じゃないですか。それを共通の趣味を通じて人と人をつなぐことをミラティブはやってますし、人と人との分かりあいたい気持ちをつなぐことで世の中がもっとよくなるというのが僕らのミッションですね。

瀧口:たしかに趣味って本当につながりますよね。いろんな国の大統領同士がミラティブで仲良くなってほしいな、みたいな(笑)。

赤川:そうですね。大統領でもそうですし、野球少年だったら野球の話で仲良くなれるとか、共通の趣味があるとそれだけで国境を越えるような人とのつながりができてくるというのを実際に目の当たりにしてます。

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