瀧口:ゲーム自体はミラティブさんが作っているゲームではなくて、ゲームを実況するプラットフォームということですよね。最近、任天堂の収益化可能指定システムとして登録されたと伺ったんですけど、これはどういうことなんでしょうか。
赤川:まずゲーム実況というものが、まさに友達の家で一緒にゲームをやる感覚を拡張しているもので、ここ15年くらいの文化なんですよね。ゲーム会社さんもこれはゲームのマーケティングになるという側面がはっきりしたんですけど、まだクリアなルールがなかった状況なんです。そこをまさに業界トップの任天堂さんやスクエニ(スクウェア・エニックス)さんがこういうルールで実況していいよというガイドラインを今作っている状況で。そのガイドラインの中に「ミラティブさんどんどん実況してください」という"ゲーム実況を応援します"というものを明確に宣言していて、その流れにどのゲーム会社も追随しつつあるという状況です。
瀧口:ちょうどその流れが来ているんですね。最近GoogleやAppleもゲームに参入しているので、流れがすごいですよね。
奥平:ここしばらくゲームのニュースが多かったですもんね。
赤川:ちょっと前にGoogleがYouTubeとゲーム体験が融合するようなクラウドゲーミングと呼ばれる新しい動きをしていまして、それってまさにゲーム実況とゲームそのものがどんどん融合していくような流れができている。その一番いいポジションにいるので頑張りますという感じですね。
奥平:そんなさなかに2月でしたっけ、35億円調達は。
赤川:はい。
奥平:JAFCO、グローバル・ブレイン、YJキャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ。
赤川:あとANRIと個人投資家ですね。
奥平:豪華な顔ぶれですね。これは計画通りなんですか?最初に会社ができた時は10億円でしたっけ。
赤川:そうですね、十数億調達しまして。その時に乗ってくれたグロービス、伊藤忠、ANRIが今回もそのままフォローオンしてくれて、新規のVCとしてはJAFCO、グローバル・ブレイン、YJキャピタルが乗ってくださったという構造ですね。
瀧口:この35億円は何に使うんですか?
赤川:大きく三つありまして。一つは日本のマーケティングです。テレビCMですとか。去年中国のTikTokがガンと来たみたいなグローバル競争のマーケットなので、少なくとも日本の中で早くマーケットを取る。二つ目が世界展開です。今韓国から始めているんですが、日本発で勝てる領域だと思うので、早く世界に出ると。三つ目は新規事業。R&Dに近いところにどんどん投資する。
奥平:新規事業というのはどういうものを想定されているんですか?
赤川:「エモモ」と言われるアバターシステムを作ったことで、いろんなエンターテインメントが拡張される未来像が描けていまして、"アバター×ゲーム実況"というだけでも新しいし、バーチャルYouTuberというのも去年出てきたし、"アバター×○○"っていろんな組み合わせがあると思っているんです。そういうものでマーケットがあると僕らが思っているところを楽しくやっていくという感じですね。
瀧口:ゲーム以外では何が掛け合わされるんですか?
赤川:そもそもミラティブ自体が、スマートフォン上に映っているあらゆるものがコミュニケーションのハブになると考えているサービスなので、スマートフォン上でやっていることのいろんなものが掛け合わされると何が起こるだろうと想像するのは楽しい世界観ですね。
奥平:先ほどTikTokのお話をされましたけど、成功要因は何だと思いますか?広告に関していうと、去年はあっちこっちでTikTokの広告を見かけましたけど。
赤川:もちろんマーケティングをあれだけの規模を打ったのは中国勢の資金力だと思いますが、根っこにあるのはアルゴリズムと思っています。TikTokのアプリの中に1500人とかのAI部隊がごりごりのアルゴリズムを中国で開発していて、いろんなパーソナライズとかディープラーニングがガンガン回っている状況ですね。結局あれが一番の競争力だと僕は思っています。
瀧口:それはTikTokでいうと何にそのアルゴリズムを使っているんですか?
赤川:例えば誰がどういう動画を何秒見ていたかというデータを集めていくと、「こういう動画も好きだろう」といういわゆるパーソナライズだとか、あと自分で動画を撮っても誰にも見られないと辛いじゃないですか。どういうタイミングで見られるとまた次もやってみようと思うんだろうとか。そういうところがものすごい科学されているんですよね。
奥平:それで滞在時間が長くなると。
赤川:そういうところは彼らは徹底的にやっていますね。
奥平:そこは35億円使ってミラティブもやろうとしているんですか?
赤川:そうですね。もちろんAIだったりテクノロジーの進化というのは最重要ポイントなので、AI部隊を作るというのも宣言していますし、投資していきます。