20190510_nikkei_07.jpg

瀧口:そもそもですが、この番組に来ていただく起業家の方ってもともと会社勤めをされていなくて、起業される方も多いんですけど、赤川さんはまたちょっと違うパターンですよね。

奥平:いわゆるMBO(経営者が参加する買収)という理解でよろしいんですよね。DeNAの新規事業として立ち上げられたものを買い取った。実際立ち上げてみてどうでした?

赤川:最初は全然ダメで。いきなりグローバルでドンと荒くやったり大企業的なマインドでやってしまったのもいい失敗体験なんですけど、いわゆるリーンスタートアップと呼ばれるものの真逆のことをやってしまって、最初の1カ月は全然ダメでしたね。

奥平:言語はいくつ対応していたんですか?

赤川:3言語です。日、英、韓。

奥平:では相当強気だったんですね。

赤川:絶対いけると思っていたので。でもそこできれいにダメになって、日本だけにフォーカスして僕がカスタマーサポートも含めて泥臭いことも全部やるということを地道にやり始めると伸び始めまして。今も伸び続けているのですが、本当に楽して勝てることはないなと思いましたね。

奥平:でも1カ月苦しくてもその後伸びているということで、DeNAの中で事業として育てていて。DeNAはある種事業を作る歴史ですよね。その中に乗ってきてもいいんじゃないかと思うのですが、MBOの形で出られたのはどういう判断だったんですか?

赤川:予算の投入の仕方やチーム編成の仕方みたいなところでどうするのが一番伸びるかという話をして、今のミラティブやDeNAの状況だと外部の資金を入れた方がダイナミックに成長できると思っているという話をさせてもらっていろいろ議論した結果、「頑張ってこい」と気持ちよく送り出してくれました。とはいえ、DeNAで使ったお金以上のリターンは出して、筋を通して外に出たという感じですね。

奥平:出た方がよりダイナミックな事業展開ができると。

赤川:そうですね。そういう側面は多かったと思っています。

奥平:ではDeNAとしては、新規事業としてよくある、一定のレベルに達していないから続けるのは難しいのでここで終わらせる、ということではなかったんですね。

赤川:DeNAが期待している成長より遅かったのは事実です。あとは売上を上げることよりサービスを伸ばすことを重視してやっていたので、ギフティング機能を入れたのも去年の秋ですし。それに対してDeNAの状況として売上利益に貢献するもののプライオリティの議論はもちろんありました。

奥平:それは意外と深い話ですね。みんなどんどん新規事業を作りたいと思うけど投資先行の時期があるわけで、上場企業としては四半期開示するとなると限界があるわけですよね。

20190510_nikkei_08.jpg

赤川:今回はリターンは返していますので限界だけではなかったと思うんですけど、上場企業のどのフェーズでどういう投資をどういう領域にやるか。例えばDeNAはモビリティとか今すごく買っていますけど、モビリティの事業じゃないし。そういう選択と集中の議論もありますし、葛藤自体も、僕自身も執行役員で経営陣だったのでそういう考え方も理解できますし、お互いにとってミラティブ事業にとって、僕はこの事業に人生をかけているから別会社がいいと思っていると、そういう話に乗ってくれたということで非常に感謝しています。

瀧口:このタイミングで大きくアクセルを踏むことは大事だということですね。

赤川:そうですね。とはいえ、例えばVtuber(バーチャルYouTuber)って意思決定の時点でまだ世の中にほぼ存在しなかったので、そういう運みたいなものは当然今のミラティブにはたくさんありますね。

瀧口:これはどうやって収益化しているんですか?

20190510_nikkei_09.jpg

20190510_nikkei_10.jpg

赤川:今は広告とユーザー課金の二つに分かれていまして。広告という意味だと日本中のゲーム好きな方がヘビーに使っていて、1日平均100分ライブ配信したり見ていたりという濃いサービスで、それにゲーム会社さんやいろいろな会社が広告を出しているというのが一つのモデルです。もう一つはいわゆるユーザー課金、"ギフト"。日本だとSHOWROOMさんなどが作っていたモデルで、配信している人の配信を盛り上げるようなアイテムを使うと配信が盛り上がるという。いわゆる投げ銭的なビジネスモデルです。

奥平:今は半々ですか?

赤川:そうですね。まだギフティングモデルが始まったのが去年の秋なので、そちらがどんどん伸びていって(広告を)抜いている過程です。

奥平:逆転しそうなんですか?

赤川:もう逆転してますね。

奥平:すごい勢いで伸びてるわけですね。

瀧口:ゲーム実況をしているところに広告を出すというのはゲーム好きの人が集まっているから。

奥平:広告としてはものすごい効率がいいですよね。

赤川:効率もそうですし、ゲームの市場もどんどん成熟してきて昔はダウンロードを取ることにみんな広告費を払っていたんですけど、今は競争も激しいのでどちらかというと、いかに一回好きになった人に長く使い続けてもらえるかという熱量が大事になっていて。そうするとゲーム実況というのが昔よりももっと重要視されている。その中でミラティブの価値もどんどん上がっているという状況です。