「スタートアップ」が未来を創る――。番組がオフィスに足を運び、話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

UPQ(アップ・キュー)の中澤優子社長は大手メーカーと競合しない「嗜好品」の家電で独自路線を追求する。起業後の結婚・出産を経て、サポートスタッフの力も借りながら製造業を貫く働き方も独特だ。立ち上げ後、スペック誤表記による製品回収などトラブルも相次いだが、それを機に生産・管理体制の見直しにも踏み切った。これから収益モデルをいかに磨き上げるのか、中澤社長に展望を聞いた。

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瀧口:中澤さん、お一人で起業されて大変だったと思いますが、出産の時に分娩台からも仕事の電話をしていたと聞きましたが本当ですか?

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中澤:そうですね。ちょうど出産が電動バイクの出荷日だったんです。発売して出荷をするタイミングで産気づいてしまって。朝5時半に産んで8時くらいまで分娩台の上にいたんですが、あ、電話しようと思って夫に携帯取ってって言って。お母さんに電話するの?って聞かれて、いや、蔦屋家電さんに電話したいんだけどって(笑)。

瀧口:普通なら出産の報告ですよね、そのタイミングだと(笑)。

奥平:そこから電話を受けた蔦屋家電さんもビックリされたでしょうね(笑)。

瀧口:パワフルですね。前回カシオ計算機を退社されたところまでお話を伺ったんですけど、その後はどうつながっていったんですか?

中澤:カシオを退社して退職金をいただいて。27、8歳の女が持っていてはいけないくらいのお金が入ってきたんです。

奥平:ちなみにどれくらい入ったんですか?

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中澤:700万~800万円くらいありました。

奥平:結構もらったんですね。

中澤:そうですね。希望退職というのもあって。で、大体1000万円くらいでカフェの開業ができるなって思って。とにかく自分で企画したり毎日ものを作ったり、経営というものをやってみたいというのが一つあって、それを元手にカフェをやろうと思ったんです。

奥平:退職金をつぎ込んでお店を借りて、カフェをオープンしたと。

中澤:そうです。

奥平:それはどこだったんですか?

中澤:秋葉原です。

奥平:(笑)。

瀧口:なぜ秋葉原だったんですか?

中澤:なぜかと言うと、カシオの携帯電話の部隊が解散となったので秋葉原界隈に来るエンジニアの方が結構多かったんです。みんな職探しをしていたので、ハローワークに行った後に秋葉原で部品を探す、という感じで。

奥平:その帰りにお茶を一杯飲んでいってもらおうと。

中澤:そうなんです。とにかくみんな暗い顔をしているので、私がカフェに立って一生懸命汗かいているのを見たらちょっとでも元気になってくれるかなっていうのがあって。いろんな人に会える交差点が秋葉原だったというのが一番の理由でしたね。

奥平:総武線と山手線が交わって、交通の便もいいと。

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瀧口:その後秋葉原で出会いがあったんですよね。

中澤:はい。2014年の秋にDMM.make AKIBAというのがオープンして、私は全然知らなかったんですが、カフェのお客さんが「中澤さんってモノづくり好きじゃなかった?あそこに面白いのができたらしいよ」って言ってくださって。そこに行ってみていろんな人に出会ったんですけど、通って来ている人たちの目が、最後私がカシオ・NEC・日立(による合弁事業)解散の時に関わっていた同僚の目とは違って、キラキラしていてモノづくり明るいねって感じで元気にやっていたんです。それを見て世の中ちょっと変わってきたんだなって。もちろん大手メーカーの話は新聞やニュースを見てちょっと違うなと思っていたんですけど、個人単位でいうとものが個人でも作れるようになって。

奥平:メイカーズムーブメントみたいなものがアメリカで興っている頃ですよね。

中澤:そうです。なのでちょっと風潮が変わってきたぞと。

瀧口:そこにいた方々は個人でモノづくりが好きで、作って売っていたんですか?

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中澤:売るまでされてる方はその当時はいらっしゃらなかったですね。Cerevo(セレボ)さんって家電ベンチャーさんはいましたけど。

奥平:岩佐さん(Cerevo創業者)ですね。

瀧口:この番組にも来ていただきましたね。

中澤:他は立ち上げたばかりのスタートアップだったり、個人の方だったり。

奥平:そもそもあそこ(DMM.make AKIBA)はたしか岩佐さんがああいう場所が欲しくて、欲しいものをリストアップしたものをDMMさんに作ってもらったという話でしたよね。

中澤:そうですね。