レーザーで網膜に画像を投影する新しい眼鏡が登場しました。この眼鏡をかけると、スマートフォンのディスプレーと同じサイズの映像が鮮明に映し出されます。しかし、小さなディスプレーが付いている従来のスマートグラスと違って、見えるのはレーザーの点だけ。眼鏡の内側には何も映っていません。

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視力が弱くても網膜が健全であれば、コンタクトをつけていてもいなくても全く同じ映像を見ることができます。網膜に直接投影するため、瞳のピント調節機能がいらないのです。

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この網膜投影に最も重要なのが「半導体レーザー」です。「半導体レーザー」は赤・青・緑の光を出し、それを組み合わせることで映像を作り出すことができます。

QDレーザの菅原充社長は半導体物理の研究者で、かつては富士通研究所でこの技術の基礎となる研究を行っていました。2001年のITバブルの崩壊で富士通がこの技術の事業化を断念したため、スピンオフベンチャーとして起業し、研究を継続。そして、緑色の光を出す半導体レーザーを安価に量産することに成功しました。

しかし、この「半導体レーザー」の技術を使って、眼鏡のもとになる超小型プロジェクターを作る計画が浮上したとき、光の強さを制限する規制の壁に阻まれてしまいます。打開策が見えず、暗闇をさまよう中でひらめいたのが、あえて弱い光にして網膜に当てるという"逆転の発想"でした。ここから、SFのような網膜投影の世界が開けます。

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現在は奈良先端科学技術大学院大学と協力し、最先端AR(拡張現実)における新たな使い方を模索しています。「スマートフォンが登場してイノベーションが起こったように網膜投影もイノベーションを起こしたい」と菅原社長。ARに活用すれば、目の不自由な人だけでなく、多くの人の役に立つと考えています。


この映像と記事はテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」(2019年1月28日放送)の内容を配信用に再構成したものです。

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