事故などで脊髄が傷つくと、体を動かす神経に脳からの信号が伝わらなくなり、手足などが動かせなくなります。自民党の前の幹事長、谷垣禎一さんもサイクリング中の事故がきっかけで脊髄を損傷。近年は、高齢者が自宅の中で転倒して損傷するケースも増えているといいます。国内では10万人以上の患者がいるとみられますが、現時点で完全に治療する方法はありません。
そんな中、厚生労働省の専門部会が、慶應義塾大学が計画している、iPS細胞を使って脊髄損傷の患者を治療する臨床研究計画の実施を了承しました。iPS細胞から神経の元になる神経幹細胞をつくり、運動などの感覚が麻痺した患者の脊髄に注射するという臨床研究です。その研究を主導する慶應義塾大学の中村雅也教授を単独取材しました。
すでに動物を対象にした実験では、その効果が現れています。背中にケガをしていて、自分の体重を自分の後ろ足で支えることができない機能障害が出ているネズミに神経幹細胞を移植すると、後ろ足が自分の体重を支えられるところまで回復しました。さらには前肢と後肢が協調運動、つまり同じリズムで動くところまで回復したといいます。
安全性などの確認が、今回の臨床研究の一番の目的です。安全性などを確認できれば、2019年の秋にも実用化に向けた段階に進む予定です。
「脊髄損傷によって寝たきりになり、車いすの生活を余儀なくされている皆さんが機能改善を得られるところまで、将来的にはもっていきたい」と中村教授は意気込みを語ります。
この映像と記事はテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」(2019年2月18日放送)の内容を配信用に再構成したものです。
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