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奥平:お話伺っていると、なぜその会社がARMに買われたのか。わかるようでわからないですよね。

瀧口:そうですね。どういう相乗効果があるんでしょうか。

芳川:ARMが今のARMになった一番の背景はスマートフォンなんですね。スマートフォンの中心的なCPUのコアとして、ありとあらゆる携帯電話屋さんに採用されて、それでARMのあの事業というのはガッと伸びたわけです。

奥平:結局パソコンの時代はインテルの半導体が世の中の標準だったけれども、スマートフォンになってARMが標準になったわけですよね。

芳川:そうですね。ただご承知のとおりスマホの伸びというのは、ある程度飽和に近づいているのもまた事実で。今誰でも持っているわけですよね。僕でも日米両国で1個ずつ持っているくらいで。そうするとじゃあ次は、となった時にいわゆるIoT。ありとあらゆる所、センサー、ライト、スイッチ類とか、車とか。ありとあらゆるデバイスからデータを取って来る。まずそこのCPUのコアとしてマーケットを取っていこうと、ARMのこれまでの伝統的なビジネスの延長で考えたというわけです。

奥平:ARMとしては例えばガスメーターでも電力メーターでもバス停でも自動販売機でも、といういわゆるIoTの世界に全部自分のところの設計図に基づいた半導体が入っていけば。

芳川:これまでの流れ、伝統的なCPUのビジネスというのは今後も伸びていくだろうと。アセットトラッキングだとか。

奥平:それこそ200億とか400億とか600億そういう世界ですよね。

芳川:1兆個という数字もありますよね。

瀧口:1兆ですか。

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芳川:一方でそれだけだと面白くないわけです。そこからはデータが生まれるわけですよね。ありとあらゆるセンサー、ありとあらゆる組み込み機器というのはデータの源になるわけで。それを今度は集めて解析をして、これを社会のため、お客様のために生かしていきましょうというのが、ARMの新機軸なわけです。

それのコアになるテクノロジーというのは当然ですけどデータ解析そのものなんです。そこでトレジャーデータに目を付けていただいて、技術的な議論から始まったというわけです。

奥平:ARMの設計図に基づく半導体が載っているIoT機器から出てくるデータというのは、トレジャーデータのサービスを通って集めたり管理しやすくなったりすると。

芳川:そうですね。

奥平:それってARM側からトレジャーデータさん一緒にやりませんかという話が来たんですか?

芳川:もともとは僕らの投資家さん経由で話がありまして。一昨年の1月頃ですかね。

奥平:2017年ですか。

芳川:そのころARMのCEO、僕の今のビッグボスですけど、サイモン・シガースと私でミーティングをする機会があって。その時は情報交換で、こんな商売でこういうビジョンでやっていますと。

奥平:いきなり買いたいとは来ないですよね、さすがに(笑)。

芳川:ただそれがきっかけになって、いろいろな技術的な議論を始めたわけですね。先ほどお話したように、もともと僕たちが得意としていたのはインターネットのログだったり、モバイルのログだったり。あるいはいわゆる企業内にあるようなCRMのデータとかPOSのデータとかそういうものの解析は得意だったんですが、デバイス、いわゆるIoTデバイスと言われるようなデータのというのは、特にこれまでたくさん注目していたわけではない。個別にプロジェクトとしてやっていましたけど。そこの目線が合った。次は僕たちもデバイスの世界に行きたい。ARMはARMでデバイスのマーケットを取るにあたって、絶対データ基盤が必要だと。そこで(ARMと)ある種お互いの目指す方向が合ったんです。

奥平:立ち位置は違うけれども、見ている方向が近かったと。

芳川:そうですね。

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奥平:この項でぜひ伺いたかったんですけど、ソフトバンクがARMを買収することになって。それは時系列としては半年後くらいですよね。一連のプロセスの中で孫さんが出てきて、お会いになられたのはいつだったんでしょうか。

芳川:一番最後ですね。2017年の1月の話をしましたけど、本当にいろいろな条件も決まって、最後の最後に孫さんとお話する機会がありまして。

瀧口:どんなお話をされたんですか?

奥平:汐留の本社に行かれたんですか?

芳川:そうです。一緒に会社を創った2人と、3人で。二人三脚でやってきたCTOの太田、それからエンジニアの古橋。すごい優秀なエンジニアなんですけど、3人で。孫さんとサイモン・シーガス。サイモンとIoT部門の長のディペッシュ・パテルという者がいたので、英語だったんです。だから日本語で孫さんとまだちゃんとお話をしたことないんです(笑)。ご挨拶はしたんですけど。

瀧口:いきなり英語で話すことに。

芳川:でも非常にこれまでの経緯を私たちからお話して、こんなテクノロジーでこんなビジョンでやってますということで、孫さんは孫さんで非常に大きなビジョンを持っていらっしゃって、そのビジョンをかいつまんでお話していただきましたね。感動しました。

瀧口:それはどんなビジョンだったんでしょうか。

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芳川:まさに1兆個のデバイス、要は世界中で実装されていくIoTデバイスの事業、価値創造のコアになるのはやっぱりデータだよね、と。トレジャーデータがやってるテクノロジーの価値というのはすでにいろいろな方から孫さんは聞かれていて、それはたぶんご理解されていて、(トレジャーデータが)最後の1ピースだと。

瀧口:最後の1ピースだと言われたんですか。

芳川:トレジャーデータが(ソフトバンクの)IoT部門のコアになってるのは確かなので、結果的に孫さんがおっしゃっていただいてることは現実になってるなと。

瀧口:そのARMの買収の先にあった未来図の最後の1ピースが、トレジャーデータだったと。

芳川:そうですね。

奥平:竹刀でしたっけ、木刀でしたっけ、あの人が振るのは(笑)。

芳川:非常に温厚な方でした(笑)。

瀧口:よく素振りをされると伺いますけど。

奥平:どっちでしたっけ。

瀧口:バットじゃなかったですか(笑)。

奥平:みんないいかげんなこと言ってますけど(笑)。

瀧口:もう都市伝説みたいな感じですよね(笑)。

芳川:非常にカジュアルにいろいろな話をしていただいて。

瀧口:緊張しますよね。

芳川:緊張しました。