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瀧口:なぜマッキンゼーを辞めてわざわざ、というのは語弊がありますが、起業ってすごくパワーのいることだと思いますし、マッキンゼーってすごく恵まれた環境のような気がしますけど。

奥平:皆さん忙しそうですけどね。

瀧口:お給料の面でも恵まれているのかなと。

柴山:フラペチーノ事件に比べると、天国と地獄のようですよね。

瀧口:なのになぜ辞められたのかなと。

柴山:そうですね。一番大きな出来事は、アルゴリズムは10兆円でも10億円でも10万円でも500円でも変わらないという、金融のプロとして誰でもクオリティの高い資産運用ができるようにしようという思いもありましたけど、もっと個人的な体験が起業へのドライブになっていたと思います。

瀧口:それはどんな体験ですか?

柴山:ある時ニューヨークの機関投資家をサポートしているプロジェクトの最中に、シカゴの妻の実家に里帰りする機会がありました。その時に機関投資家の資産運用をアドバイスするのもいいけど、自分たち家族の資産の状況も見てほしいと言われまして。そしたらプライベートバンクの運用報告書を持ってきたんです。

瀧口:プライベートバンクで運用されていたんですか?

柴山:はい。プライベートバンクって通常は数億円の資産を預けないと口座開設できないんです。

瀧口:富裕層の方のためのものというイメージですよね。

奥平:奥様のご実家は豊かなご家庭だったということですか?

柴山:結果的にはそうだったんですけど、その時まで全く気付かなくて。というのも普段の生活ぶりがとても質素だったんです。そしてアドバイスをしてほしいと言われて出てきたものは富裕層向けのプライベートバンクの報告書で。実際そのくらい(数億円)の金額が運用されていて。

奥平:ちなみに奥様のご両親は、お仕事は何をされていたんですか?

柴山:サラリーマンですね。

瀧口:サラリーマンで富裕層ですか。

柴山:それに衝撃を受けまして、まず桁が一つ違うんじゃないかと(笑)。見ると実際にちゃんと運用されていて。サラリーマンなのになぜ富裕層の仲間入りをしているんだろうと思って聞いてみたところ、まだ資産が100万円もなかった若い時に、会社の福利厚生でプライベートバンクのサービスが使えていたと。石油会社なので将来みんな富裕層になるだろうというプライベートバンク側の見込みで。

奥平:青田買い的な仕組みですね。

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柴山:アメリカなので基本的に預金はないんですよね。アメリカは80年代に預金の価値が目減りしたことがありましたので、生活費や住宅ローンを除いて残った資産は基本的に資産運用に回していきます。アメリカにおける預金の割合は14%ほどです。

瀧口:日本とはそこが違いますね。

柴山:かつ富裕層向けの資産運用のサービスをお任せでずっと使えていたと。自分自身の両親のことを思い出してみますと、同じような年齢、学歴、サラリーマンとして大企業で働いてきていたのに(資産に)10倍以上の差があって。

同じ家族でも日米の差があるわけですが、私の両親の場合はバブル崩壊時も株取引はしていなくて、退職金で住宅ローンを完済して、数千万円の資産があって。日本の中では恵まれた方ではあると思うんですけど、アメリカの両親の資産はその10倍になっていた。その日米格差にショックを受けたことが起業しようと思った大きなきっかけだったと思います。

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瀧口:日本ではそういったリテラシーがあまり根付いていないから、ということなんでしょうか。

柴山:リテラシーもある程度は大切だと思うんですが、本質的にはリテラシーの問題ではないと思っています。私自身アメリカのウォール街で働いていて、日本人とアメリカ人のリテラシーがそこまで違うとは正直感じなかったことが一つ。

あと妻の両親が自分たちでも資産運用をしていまして。子供名義でプライベートバンクの口座は作れないので、私の妻のクリスマスギフトなどは自分で投資信託を選んで運用していたんですが、そちらは全然増えていなかった。富裕層向けのサービスを利用できた分については資産が大きく増えているんですけど、自分で運用していたものは増えていないので、リテラシーの問題ではないんじゃないかと。

瀧口:個人のリテラシーの格差の問題ではなく、仕組みの問題だと。

柴山:仕組みの問題でもあり、成功体験も大きいと思いますね。アメリカでは401kも広まっていますので、周りに「長期・積立・分散」で富裕層の仲間入りをしたり、老後の資産を増やしたりという人が相当な確率でいるわけですよね。家族の中にもいるかもしれないし、上司がそうかもしれない。そうすると金融リテラシーがあるかないか関係なしに老後に向けた資産運用ってそういうものだよね、という感覚があるんです。そうすると仮にリテラシーが無かったとしても正しい資産運用にアクセスしやすいというのはあるんじゃないかと。