奥平:ありがとうございます。両社ともハードウェア分野のスタートアップと理解しているんですが、スタートアップの世界を過去10年見てみると基本的にソフトウェアが中心だったと。今ハードウェアが増えていると思うんですが。
ロン・ファン:ハードウェア開発はとてもチャレンジングと思われています。それには二つの理由があります。一つ目の理由は資本が必要なことで、二つ目の理由は開発に時間がかかることです。投資家の多くはソフトウェア分野に投資することを好みます。早くて安くすむからです。現在、ほとんどのハードウェア企業はハードとソフトを組み合わせ、開発時間を短縮することでリスクを減らしています。
ロン・ファン:パートナーとなった現代自動車は我々のハードウェアより我々の持つソフトウェアの技術で協業したいと考えています。現代は開発時間を短縮しコストも削減、リスクも減らすことができるわけです。
ハワード:私たちもハードとソフトの組み合わせで課題を解決しようとしています。ハードウェアを開発するにあたり、資金を集めることはなかなか難しいのが現状です。シリコンバレーでハードウェアに投資したいと考えるベンチャーキャピタルは全体の10%以下です。ハードウェアに関心はあるのですが、潜在的な投資家は減少しています。資金調達の上ではハードウェアに投資することが魅力的であるということをアピールすることが必要です。
奥平:先ほど現代自動車との提携の話をされて、先週の発表だったと記憶しておりますが、実際に現代自動車とコラボレーションするに至った経緯と、日本の自動車メーカーとも話をされたのか、その辺りお聞かせいただけますか?
ロン・ファン:自動車業界では自動運転への関心が高く、多くの企業がこの分野に投資しています。しかし未来を考えると自動運転だけではなく、空飛ぶ自動運転車を開発していく必要があると思います。今や多くの自動車会社が航空宇宙会社になろうとしています。自動車会社は空を飛んで人を輸送するという会社に変革しようとしています。5年とか10年で自動車業界に大きな変革が現れると思います。自動車メーカーも空飛ぶ自動車をつくる時代がやってきます。こうした背景の下、現代自動車との関係が始まりました。我々は空飛ぶ自動車を作るためのツールを提供するのです。
今いくつかの日本企業と戦略的なパートナーシップに向けた話し合いをしているところです。おそらく2019年か2020年には我々のテクノロジーを日本で見ていただけると思います。(他国と比べると)日本の伝統的な自動車各社の決断は遅いと思います。
奥平:ちょうど今、日本の自動車メーカーという話がありましたけど、リアルタイム・ロボティクス社はトヨタのToyota Research Institute、AIの開発子会社のファンドから出資を受けられた。やはり日本の会社はスローだと思いますか?
ハワード:私は日本企業が世界の大企業に比べてスローだとは思いません。トヨタ自動車は世界的に「クイック」な会社とは思われていないのですが、Toyota Research Instituteによる資金拠出の決定は非常に早かったと思います。BMWとも仕事をしていますが、時間のサイクルは同じです。日本企業と他国企業に大きな違いというものを感じません。それよりも規模や、説得に必要なマネジメント層がどのくらいいるかなどによって会社の違いがあらわれます。日本が重要ということは非常に明確です。創業当初からそうです。世界のロボットの半分は日本で作られているからです。
ハワード:ラッキーなことに我々は京都にあるJOHNANと出会うことができました。この会社はファクトリーオートメーションの伝統ある会社でありながら、ロボット分野には進出していませんでした。彼らは我々のために投資をし、日本企業を紹介し、インフラも提供してくれました。JOHNANというパートナーを得ることで日本企業との信頼に基づく協業関係を比較的短期に築くことができました。我々にとってドイツは第2に重要なロケーションで、米国は3番目に重要な国です。