奥平:これは産・官・学がオープンイノベーションの三つのカギで、そこがどううまくコラボレーションのカギをどう取っていくかという話だと思うんですけど、両社それぞれ元々は実績が無い中で始められたと思うんですが、何かブレイクスルーになったきっかけはあるんでしょうか。
河野:私たちの場合はアクセラレータープログラムというのが大きなきっかけになりました。そこで受賞したことも、東京都に認定してもらったこともあります。その中で大企業の方々が一緒に伴走してくれるというプログラムがあったんですね。その中で一緒にこうやってサービス展開していったらいいよね、とアドバイスをいただいたり。そうして実績を積んできたということがあります。
あわせて企業とのコラボレーションの面で、いかに実証実験を繰り返すかが我々にとって大事だったりするので、そこでファーストビリーバーになってやってくれたことが大きなきっかけになります。その時にちょうど大学の先生たちもアクセラレータープログラムに参加していて、このサービス面白いね、と我々のサービスに興味を持ってくださって、アドバイザーになってくれて、そこからご縁で技術的に困ったことがあったらアドバイスをいただけることもありました。そこから今のサービスにつながっているというところがあります。
奥平:エクサウィザーズも先ほどのチャートを見てますと、いろいろな所と組んでやっていらっしゃると思いますけど、そもそも会社のできたいわれからして大学発ベンチャーだったんですよね。
粟生:そうですね。元々は京都大学、大阪大学出身のエンジニアが創業したエクサインテリジェンスという会社と、静岡大学情報工学部の静大発ベンチャー、この二つのベンチャーが一緒になったというのが、この会社の成り立ちです。
奥平:元々そういう意味では大学との結びつきが非常に強いということですね。
粟生:はい。
奥平:課題の方ですが、今オープンイノベーションという言葉が非常に言われておりまして、皆さんこういうイベントを含めて関心を持ってくださっているのは非常に良いことなんですけど、一方で本気度と言いますか。例えば軽めの協業をしているところに将来的に買収する意向がありますか?というアンケートを取ると、なかなかそこまでは、という話もありまして。大企業の姿勢の一例として申し上げましたけど、何か課題として感じられる部分はありますか?
河野:率直に言うと担当者次第かなというところがありまして。やはり熱量が無いとコラボレーションもうまくいかないと思っていて、本気でこのサービスを一緒に世の中に広めていきたいかと思ってもらえるかどうか、それも困難があっても乗り越えようという思いがあるかどうかが大事だと思っています。それを大企業の上の方が認めてくれて「やってみなはれ」と言ってくれる環境があるかが大事だと思いますね。
奥平:粟生さんいかがですか。
粟生:ここ2、3年でオープンイノベーションも変わったかなと実感しているんですが、以前は大企業さんと商談する時に我々スタートアップ側がお伺いするケースが多かったんですけど、最近は大企業さんの方からいらしていただいたり、弊社のような大学発、先生たちがたくさんいるようなベンチャーですと打ち合わせも先生の研究室で毎回行われたりするので、大企業に行くのではなく、もう少しフラットに人が移動して対面で会うことを重要視できるようになってきたと思います。
瀧口:最初は難しかった時期もあったんでしょうか。
河野:やはりプロダクトが完全にできていない時は、大企業の方々にとってそのサービスを使ってみるというのはなかなか難しいと思うんですね。よく分からない人たちから提案を受けて、そのサービスを自社で取り組むかどうかの判断は非常に難しい。
そこを大企業の方で本当に熱心な方がこのサービスは世の中にあるべき、と伴走してくれて、実証実験をやってくださったり、出てきた課題をどうすれば解決できるんだろうかと一緒に悩んでくれたり、価格の部分についても、うちはこの値段なら入れられると思うよ、とアドバイスをいただいたりしながら作ってきたというところがありました。大変だったんですけど、オープンイノベーションが普及してきた中で乗り越えられた部分は正直大きいと思います。
瀧口:粟生さんいかがですか?
粟生:先ほどおっしゃったM&Aする意識があるかないか、という部分にも近しいと思うんですけど、受発注の意識だとオープンイノベーションは成立しないと思うんです。(企業側が)発注しているからとか、私たちも受託しているからという意識を捨てることが非常に重要だと思っています。お金は、申し訳ないんですが、ある方が出していただいて(笑)、本気で投資していただく。
その代わり我々スタートアップも本気で、技術を含めて一緒に汗をかくということが大事なのではないかと。河野さんもおっしゃっていたように熱量を上げていく場作りとして、会社対会社なんですけど、誰と何をやるかというのは非常に重要なので、お互いの人となりとして価値観を話し合う場というのは無駄にしてはいけないと思いました。