瀧口:ありがとうございます。続いてエクサウィザーズの粟生さんにプレゼンをお願いします。
粟生:エクサについてご説明させていただきます。エクサというのは10の18乗というデータ量を表します。ウィザーズは達人、賢者という意味を表すのですが、10の18乗の魔法使い集団という意味で、人工知能というテクノロジーを魔法に置き換えていまして、AIを利活用したサービス開発、産業革新と社会の課題を解決することを目指しています。現在創業して2年と10か月になるところですが、おかげさまで経済産業省のJ-Startupにも認定いただきました。今後は日本発のAIを国内のみならず海外にも広めていきたいと思っています。
現在は6事業ありまして、代表的な弊社の自社サービスの事業は二つあります。一つ目はケア事業といいまして社会課題、高齢者時代の認知症患者さん向けのケアの技法、ユマニチュードというケアの手法を広める活動をしております。
粟生:二つ目はHRTech。これも社会課題である労働人口減少、この課題を感じている企業の人事の皆様をサポートするHR君というかわいいAI搭載の人事担当者を作りまして、この事業を展開しております。『雇用の未来』を書き、現在の職業の8割はテクノロジーに代替されるだろうと言われたマイケル・オズボーン教授にも弊社のアドバイザーに就任していただきまして、日本からこの社会課題を解決するサービスを発信していきたいと思います。その他フィンテック、メドテック、後ほどロボット事業についても少しご紹介させていただきますが、イノベーション事業ということで、まさにこれから人工知能を利活用して産業課題を解決したいというお客様とのコラボレーション事業も推進しております。
瀧口:ありがとうございます。このケア事業というのは具体的にどうやってAIを活用しているんでしょうか。
粟生:なかなか言葉で説明するのが難しいんですけれども(笑)。ユマニチュードケアというのは、認知症患者さんをケアするコミュニケーションとスキンシップのケアメソッドです。このケアメソッド、20センチ患者さんの近くによってコミュニケーションをとるという型があるんですが、この技法はなかなか日本人スタッフの介護士の方や専門職の方が身につけるのが非常に困難ということで、AIが達人の技を学習して素人さんや今後ユマニチュードケアを学びたい方にコーチングAIとして技能を伝承するために使っています。
瀧口:いわば暗黙知だったところにAIを使うことで見える化するということですね。
粟生:まさにそうです。「もっと近づいてください、いきなり手を触らずに肩からゆっくりさすってください」というところをスマートグラスをつけながら実験したりしています。現在は実証実験中なんですが、今日本で一番介護施設をお持ちのSOMPOグループさんのご協力の下、AIはデータが必要ですのでデータと実験の場を提供していただいてコーチングAIを作っています。
奥平:先ほどロボットとおっしゃいましたが、ロボットはどんな取り組みなんでしょうか。
粟生:ロボットについては、労働人口減少で製造業が最も人材不足と言われていると思いますが、二つ取り組みがあります。一つは工場を省人化するというロボットの活用の仕方。二つ目は通常ロボットを導入する上で、人間がやっていることをロボットで動作するためにはたくさんの制御プログラミングが必要だったんですが、人間の動きをAIが学習して簡単にロボットを動かすことができる。知能の部分に我々エクサの知能を使ってロボットを動かします。
粟生:これはロボットがタオルを畳んでいるところですが、ほとんどプログラムは入っていないです。
瀧口:指の動きが繊細ですね。
粟生:そうですね。なるべく人間に近しいイメージをということですが、このハンドはいくつか課題があって、これは4代目なんですけど、実験中に何度も壊れてしまいまして。VRで人間の動きを学習させてタオルが畳めるようになっています。
奥平:(このロボットは)自動車部品メーカーのデンソーですよね。たしかロボットを作るメーカーと理解していますが、これはどういう経緯でコラボレーションが始まったんでしょうか。
粟生:元々は、弊社のアドバイザーでもある早稲田大学の尾形哲也先生が、ロボットがTシャツを畳むという論文を出していらっしゃっていて。弊社創業期にエンジニアと一緒に何をやろうかと話し合った時に、エンジニアが尾形先生の論文を実装したいと言いまして。あれは絶対世の中の役に立つであろうということで、ロボットもデータも何も持っていなかった創業期、デンソーさんにロボットを貸してくださいとお願いをしました(笑)。
奥平:それはいきなりトントンとドアを叩きにいったんでしょうか。
粟生:たまたま私の前職のご縁もありまして。当時デンソーの新規事業の理事だった方が、ちょうどデンソーウェーブさんというロボットの子会社の社長に就任されていたんです。オープンイノベーション時代に苦労した方がまたさらにロボットの子会社の社長になられていて。「すみません、尾形先生のロボットの論文を実装して世の中に出したいので、ロボットをタダで貸してください」とお願いをして、ご協力いただいたのがご縁です。
瀧口:まさに産学連携のオープンイノベーションといえますね。