奥平:でも上場されて一般の株主さんの監視が入っているので、なかなか非上場の時に比べて先行投資で赤字を続けるというのが難しくなっていると思うんですが、新規事業を始める時のコストとリターンの関係はどう考えていらっしゃいますか?
松本:我々は上場したからといって投資をしないという考えはなくて、むしろ未上場の時より投資ができるようになったと考えています。まず一つ大きいのが、この9月に昨年度の決算発表をさせていただいたんですが、黒字化は維持しますが、そんなに利益は出さない。
つまり、事業で出た利益は再投資をします、ということを開示させていただいています。投資家の方も実はそれを受け入れてくださっていて、実際投資家からも好評で、むしろなんで赤字じゃないんだというが声もありまして。投資家の皆さまの多くが、特にかなりの割合を保有してくださる方の期待値は、利益を期待しているわけではなく、むしろ成長を期待している。このタイミングの利益ではなく、まさに産業の構造を変える投資を期待されていると感じています。
松本:自分たちの企業の価値は何か、時価総額は何によって図られるべきかというと、営業利益ではないと思っていて、売上総利益だと思っているんですね。それはプラットフォームとしてお客さんが喜んで商品を買っていただく。そして先ほど申し上げたように、サプライヤーや印刷会社、物流会社に価値を提供すると利益を折半していく。この利益は売上総利益になってくるんですね。なので売上総利益を最大化するための投資は積極的にしていくし、我々の市場価値は売上総利益によって決まって来ると考えて経営をしているので、今後も積極的にこれまで以上の投資をしていこうと思っています。
奥平:Amazonみたいですね。Amazonも営業キャッシュフローの極大化を目標にしているので。意識されていますか?松本:かなり意識しています。Amazonは今21世紀の小売流通の世界のインフラになっていて、サーバーもAmazonが無いと成り立たない。AWSによってインフラ化をしていて、私の子供も毎日Amazonプライムを見ているんですが、世の中のインフラを作ってきている。
つまり便利なサービスを作っているじゃないですか。社会的な良し悪しはあると思うのですが、便利。利便性の高いインフラを作るというのは我々が目指しているところであって、実際Amazonはリアルな社会を変えている会社で、どうAmazonが経営されているのかということは、意識を持って見ています。
瀧口:あらゆるもののプラットフォームを作っていくという意味では、AmazonもGoogleもAppleもプラットフォームを作っている会社で、そういうところを目指していらっしゃると。
松本:そうですね。世の中のインフラを作ってきた。特に20世紀にできたインフラではなくて、21世紀にできたインフラを作っている会社。そこを参考にして我々も同じように、世界まではいかなくても、日本のインフラを作っていきたいと思っています。
奥平:特にAmazonは物流センターがコアだと考えると、ある種リアルを持っているから自身を投影しやすいんですかね。
松本:物流センターによってお客様に当日届くこともそうだし、AmazonマーケットプレイスはAmazonに荷物を置いておくと、Amazonプライムと付いてその日のうちに全部配送してくれる。それまで自分たちで行っていた配送業務を、全てAmazonが対応してくれる。そうやって出店者をエンパワーメントしているし、結果的にお客様も利便性を上げていく。
(Amazonは)リアルを持ってお客さんもサプライヤーもエンパワーメントしていく仕組みで、そうすると店舗に行くよりも、もっと便利になっていく。こういった、より便利なサービスを作っていくというところで参考にしていきたいと思います。我々の掲げる、仕組みを変えて世界をよりよくしていくというビジョンを実践している会社だと思います。