松本:最初ラクスルって大学の友人や同世代で始めたんですね。自分で全部やらないといけなくなってしまって。すべてのミーティングに出て、全ての決定をしていく。もう嫌な上司ですよね。
奥平:スタートアップあるあるですよね。創業者が全部見れちゃうからやり続けてしまう。
松本:自分が全部見られるサイズだったので、指示の嵐になるわけですね。マネージメントができてたらいいんですが、たいしてマネージメントできないのに指示だけが飛んでいく。売り上げが伸びてオペレーションが増えて、ただでさえ大変なのにいろいろなものを求められて。ちょうど2013年から2014年にかけて組織が一回崩壊したんです。組織を急拡大させてたくさん採用する中で、採用した人が次から次へと辞めていく。
瀧口:そういう時期があったんですね。
松本:その時にワントップの文鎮型組織、社長がいてメンバーがいてではなくて、チームで経営をしなくてはいけないなと。チームで経営をする時に今いる人を引き上げてそれができるかというと、自分との実力差が開いていたら信頼して任せることができなくなって、自分が見ざるを得ない。だったら自分より優秀な人を採用して、任せてチームとして経営をしていこうと、組織崩壊がきっかけで考えるようになりました。その時に自分より優秀な仲間を集めようということで、2014年1月に永見に会って、4月に入社してもらいました。
奥平:もともとお知り合いだったんですか?
松本:いえ、ビズリーチを経由して。
奥平:ビズリーチ。(スタートアップには)よく登場しますね。
奥平:永見さんはもともと金融系にいらっしゃったんですよね。
永見:外資系の投資ファンドに一番長くいました。(ラクスルからは)ビズリーチ経由で6回くらいスカウトが来まして1回会おうとなりまして、それが2014年1月。
瀧口:猛アプローチ。
永見:猛アプローチですね。
瀧口:なぜビビッと来られたんですか
松本:当時一緒に採用をやっていた人間が永見のプロフィールに惚れて、何度もストーカーのようにメールを送り続けたという(笑)。
永見:6回(スカウト)メールが来るって普通無いじゃないですか。やはりそのくらいベンチャーとして熱意を感じたというのが大きいですね。必要とされているというのが重要だと思っていて、まずは会ってみようと思いました。
奥平:2014年1月に会われた時にすぐ気持ちは固まったんですか?
永見:当社の「仕組みを変えれば世界はもっとよくなる」というビジョンに共鳴したというところが一番大きかったですね。
奥平:スタートアップというのは基本的に組織をゼロから作るという、いわゆる発展途上で、悪い言い方をすれば未整備のところがあるわけですよね。そのあたりはご覧になられてどうでしたか?
永見:実際は入社した後に未整備な状況を見たというのが率直なところで。
奥平:見えてなかったから入った。
永見:見えてなかったから入りましたね(笑)。
全員:(笑)。
永見:ベンチャーあるあるですね(笑)。
瀧口:見せないように努力されていた?
松本:そうですね(笑)。
永見:入った当初は離職率が30%くらいで。今はだいぶ低くなったんですが、自分が一緒に働く予定だった人が辞めていくということを、自分なりにどう捉えていいのか戸惑ったこともありました。それも含めてベンチャーに飛び込むということもありまして。会社はビジョンしかない。ビジョンが唯一の資産。そこから始まっている中で、いろいろと足りないものをあげたらきりがないじゃないですか。足りないものを言うよりも、足りないものを作り上げていこうというポジティブな思考に持っていくのが大事かなと思いました。
奥平:どこから手を付けていこうという感じでしたか。
永見:最初は退職率が高かったことを踏まえて採用にコミットしていて、自分たちの部門だけではなくて、会社全体で今後必要になる人材を採用する必要があると。最初の3ヶ月から半年は採用にフルコミットしていました。
奥平:総合的な取り組みになると思うのですが、離職率を下げる鍵は何なのでしょうか。
永見:やはり会社のビジョンに対して共鳴する人にちゃんと入ってもらうということと、そのビジョンを浸透させ続けるという当たり前のことが大事だと思っていて。その船に乗るべきじゃない人が入っていたりすると船も揺らぐと思いますし、船の方向性を示してあげることが大事だなと思っているので、会社のビジョンを輝かせ続けるということはすごく大事だなと思っています。
瀧口:ビジョンを浸透させるというのは、具体的にどういうことをするんでしょうか。
永見:私たちの会社で言うと、ビジョン、ミッション、バリューをもう一度見直して、ビジョンの「仕組みを変えれば世界はもっとよくなる」というのは変えていませんが、そこをもう少し具体化するためのミッションや行動規範を見直して全社の合宿を通して浸透させていく。それを私が参画して1年後から毎年やっていますが、人が増えてもやり続けることを大事にして、今も経営しています。
瀧口:永見さんが入られて一番何が変わりましたか?
松本:ラクスルの歴史というのは、「ビフォー永見」と「アフター永見」に分かれると言うくらいで。
瀧口:「ビフォーキリスト」と「アフターキリスト」みたいですね(笑)。
松本:「アフター永見」はまさにラクスル第二章ですよね。一番大きく変わったのは採用の人に対する考え方。良いリーダーシップを作っていって、そのリーダーとメンバーが信頼関係を作れて、一つのビジョンをもとに運営ができている。採用にしろ、ビジョンを浸透させることにしろ、設計して組織を運営する。これができるようになったことが一番大きな変化だったと思います。