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奥平:そもそもなんですけど印刷って縮み行く産業という認識があるのですが、そこを選んだことに対して、スタートアップの急成長と縮み行く産業のギャップというのはどう考えられたんですか。

瀧口:出版業界の不況もありますね。

松本:出版は不況なんです。ただチラシや名刺などのいわゆる商業印刷、事務用印刷というのはこの10年ほとんど変わっていないんですね。ほぼフラット。なので(今後も)言われるほど需要はなくならないんじゃないかと思っていて。当時も今も市場規模は変わっていないんですね。人はいまだにチラシも名刺も使うし、封筒も作る。縮み行く市場だからこそ競合が入ってこない。あまりスタートアップが入ってこないので、実際この10年やっていて、競合は1社も現れていないんですね。

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松本:今でこそX-Techってよく言われるようになりましたけど、言われるようになったのもここ2年くらいの話で。2015年、16年くらいまではX-Techなんてなくて。お客さんは買い物をAmazonでするじゃないですか。仕事も打ち合わせもそんなにしたくない、早く発注できるならした方がいい。だんだんBtoBもEコマース化していく中で、市場が大きくて競争が無いのであれば、うまく行くんじゃないかと思ってましたね。

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奥平:ある意味完全なるよそ者じゃないですか。いきなりこんな仕組みがあるから使ってください、と言われてさっと使ってもらえるとは思えないんですが、最初のパートナーの印刷会社をうまく取り込むのは相当苦労されたんじゃないですか?

松本:そうですね。ラクスルは今は印刷をオンラインで販売、裏側にはいろいろな印刷会社さんがいる、という先ほど申し上げたような仕組みなんですけど、最初は印刷の比較サイトだったんですね。印刷会社を選んで、こういう印刷をしたいときはどの印刷会社がいいか比較する。価格.comのような仕組みです。

奥平:価格.comは家電だけれど、印刷に関する比較サイト。

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松本:はい。データベースを作って比較ができますよ、見積もりが取れますよ、という比較メディアだったんです。そこからのスタートで、載せたい会社が無料で載せられる場所を作って、無料なので使いたい方は使ってください、という形で始めました。

奥平:それは比較的ハードルが低いですね。

松本:そうですね。コストはそれほどかかりませんでした。

奥平:お客さんとしても新たな広告の一つの手段という認識で入ってきてくれた。

松本:まさにそうです。

奥平:結果それがうまく行ったわけですね。

松本:それがうまく回り始めて印刷会社さんに価格を出していただいたり、広告を出していただいたりして収益が回り始めた。2010年の4月に最初のサービスをスタートして、最初の2年半くらいはずっとそのサービスをしていましたね。