「スタートアップ」が未来を創る――。番組がオフィスに足を運び、話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

自前で工場を持たない「シェアリング」の仕組みを印刷業界に持ち込むことで急成長を遂げたラクスル。成功の裏に「組織崩壊の危機」があったという。シェアリングの旗手は、いかにして危機を乗り越えたのか・・・。ラクスル社長兼CEOの松本恭攝氏に聞いた。

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奥平:どうぞよろしくお願いします。

瀧口:ラクスルさん、2009年創業ということは、もうすぐ10年。

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松本:そうですね。そろそろ10歳になります。

奥平:今小学校だとハーフ成人式みたいなものがありますけどね。20歳の半分ということで。そういう感じですね。

松本:そうですね。人生の三分の一くらいラクスルをしていることになりますね。

奥平:割と最近できた会社という印象がありましたが、気が付いたらそんなに。

松本:私も最近作った気がしていましたが、もうそんな年になっていたんですね(笑)。

瀧口:こちらの番組「STARTUP X」なんですけど、もはやスタートアップではないんでしょうか。

奥平:いきなり番組のコンセプトひっくり返すような感じですけども(笑)。

全員:(笑)。

松本:そうですね。そろそろスタートアップを卒業して中小企業になっていくのかなというタイミングではあるかもしれませんね。

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奥平:売り上げ的にはこの前の期が110億円くらいでしたか。

松本:そうですね。

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奥平:中小企業というにはそろそろ大きすぎるという感じになってきて。

松本:成長企業として頑張っていきたいですね。

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瀧口:創業されたきっかけというのは何だったんでしょうか。

松本:きっかけは2009年で、スタートアップという言葉すら無かった頃ですね。

奥平:2008年9月にリーマンショックが来ているので、資金調達という環境から言うと最低の時ですよね。

松本:最低でしたね。

瀧口:そんな時に。

松本:初めは2008年、コンサルティング会社に入ったんですが。

奥平:A.T.カーニーですね。

松本:はい。アメリカの会社の日本支社です。まさにリーマンショック直後だったのでコスト削減ばかりをやっていて、いろいろな大企業のコスト削減をする中で印刷が一番削減率の高い業界だと。この業界って非効率だなと思って、これを業界特化で何か仕組みを作ることができたら、事業になるんじゃないかなと思ったのと、あまりコンサルティング会社で働くのが肌に合っていなくて、面白くなかったんですね。それで自分で(事業を)始めました。

奥平:A.T.カーニーではプロジェクトを担当されていますよね。印刷に特化したご経験があったわけではないんですね。

松本:ないですね。それこそいまやっている物流とか広告とかごみの焼却費とか、全部見る中で印刷って非効率だなと。なので他との比較ですね。

奥平:(印刷は)業界を横断して非効率であると。どこの業界にも関係していて、かつ非効率なもの。

瀧口:それで印刷業に目を付けられた。

奥平:でも実際足を運ばれると大中小零細、家内工業的な世界があって、ご覧になられてこれはいける、と思ったんですか。それともこれはあかんと。

松本:結構いけると思いましたね。最初50社回って。

奥平:それは飛び込み営業ですか?

松本:知り合いの紹介の紹介とかでいろいろ回りました。実際の印刷機を回させてもらったり。外注の比率が高かったんです。

奥平:外注と言うと?

松本:自分たちで刷らずに。

奥平:受注だけして、別のところに投げるということですね。

松本:その比率が結構高いなと思いまして。それはなぜ起きるかというと、印刷会社って小さいんですね。水道橋とか飯田橋にある小さい印刷会社をたくさん回ったんですけど。自社で持つ印刷機って、3台とか。1台が安くても数千万円、高いものだと2億、3億円するんですね。小さい会社はそんなにたくさん買えないじゃないですか。近所にたくさん印刷屋はあって。自社で受けて効率の良いものだけを自社で刷って、そうではないものは外の協力会社に出すと、大体どこもそういった仕組みになっていて。

奥平:それは印刷機ごとに向き不向きがあるんでしょうか。ボリュームや紙のタイプなど。

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松本:はい。例えば会社にあるレーザープリンターでチラシを刷ることもできるんですが、100万枚刷れなくはないけど、何日も回しっぱなしでカウンターチャージが大変なことになるじゃないですか。でも輪転機で刷ると数時間で終わる。そういった効率のよい刷り方があって、その効率のよい刷り方をする業者のマッチングがうまくいっていない。

ではその印刷会社がどういう印刷機を持っていて、この印刷だったらここ、というのをダイレクトにつなげてあげることで、下請けの中間マージンを無くしてもっと効率化できるんじゃないかなというのが、いろいろ話を聞いて思ったことですね。

瀧口:そういうことをやっている企業は当時他に無かったということですよね。

松本:そうですね。ありませんでした。

奥平:昔ながらの印刷ネットワークの中で、受託したり委託したりの関係が発生していたと。

松本:そうですね。