瀧口:日本とイスラエルを比較して、日本のベンチャー投資に対する姿勢は足りないなと思う部分はありますか?

ラモト:確かにベンチャーに対する投資は(日本は)イスラエルに比べて人口当たりでは少ないのですが、おそらく理由の一つは、日本はモノ(ハード)を作る国であることです。イスラエルは逆にソフトを作る国です。ソフトとハードの違いは、ハードを作るのに組織はたくさんのお金が必要です。逆にソフトは小さいベンチャーから生まれることが多いです。なので、そのベンチャーにお金が本当に必要なのかどうか、ということもあると思います。

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瀧口:ではこちらのデータをご覧いただきたいと思います。ベンチャー投資のGDPに対する比率なんですが、先ほどラモトさんがおっしゃっていた通りですね。

奥平:実額ではなくGDPに対する比率ですね、割合。(イスラエルは)やはり高いですね。

瀧口:GDPに対するベンチャー投資の比率が(イスラエルは)0.4%。

奥平:面白いのが成熟期の会社に投資する比率は30%で、アメリカと比べると低いんですね。若い企業に対する(投資の)比率が大きいということですね。

ラモト:そうですね。あとはいつ買収されるかによってですね。イスラエルの場合は早ければ早いほど買収されたいと考える方も多かったのですが、今は少し変わってきました。もっと大きい会社を作りたいという意識が強くなりました。

奥平:イスラエルの皆さんは海外の企業に買ってもらうことをゴールの一つに据えて、スタートアップを頑張っていると。

ラモト:そうです。

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奥平:あともう一つ伺いたいのが、大臣のインタビューにもありましたが、教育です。これまでの回でも(イスラエルは)最先端の教育がトップティアの人たちに対して手厚く行われているという印象がありますが、一方日本はどちらかと言うと平等というか、みんなに同じ教育を施して全体を底上げするという違いがあるな、と見てて感じたのですが、ラモトさんは日本の教育を受けられたことはありますか?

ラモト:日本の学校はないですね。日本に住んでいた時はアメリカンスクールに通っていました。

奥平:日本の教育を真正面からではないですがご覧になられて、何か思うところはありますか?

ラモト:日本の教育には良いポイントがあると思います。英語で言うと「タスクオリエンテッド」という、何かをやるなら、きちんとやってくださいという。

奥平:きちんと手順を踏んでやっていくということですね。

ラモト:そうですね。それがすごく大事な気がします。日本の教育は本当に集中して、結果が完璧に近いです。完璧でないと良くない。それはとても良いポイントだと思います。それが日本の製品の質につながっている。

日本企業が作っている製品も同じように完璧に近いですね。もし完璧にできなければ、次の世代でもっと完璧に近付けるというような、改善という精神ですね。その改善の精神はイスラエルにはあまりありません。逆に新しいものを作る。全然違う文化ですね。

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奥平:今、どちらかというと日本なり世界なりに必要とされているのは、改善やステップバイステップもよいけれども、非連続の変化、ある種突然変異を起こさなきゃいけないということが言われているわけで、そういう中で言うと、イスラエルのやり方はいいなと思いますね。

ラモト:(日本とイスラエルが)上手く組み合わさればすごく良い結果が出ると思います。