瀧口:ではこの辺りで次のキーワードに移りたいと思います。『スリープテックをビジネスに活かすには?』
奥平:これは三菱地所の出番ですね。
瀧口:こちら(ビジネスに生かす方法)を模索するためにニューロスペースとタッグを組まれたのが、根神さんの三菱地所ということですね。
奥平:三菱地所は実証実験を行ったと伺いましたが、具体的にはどのようなことを行ったんですか?
根神:約1か月間、就業時間中の仮眠に注目しまして、仮眠を取った場合に実際の業務にどういう生産性の向上が見られるのか、自宅に帰った後、夜の睡眠にどういった影響が出るのかということを、確認する実験を行いました。
奥平:そもそもなんでそういうことをやってみようと思われたんですか?ある種睡眠は個人で管理してください、というのが古くの人事部や労務管理という気がしますが。
瀧口:就業中に仮眠なんてもってのほかというイメージがありますよね。
根神:当社もこれまでは就業時間中に仮眠なんて、という考えはあったと思います。しかし働き方改革をしていく中で、限られた時間で生産性を向上する観点から、仮眠を取ることで生産性が高められるのであれば、眠い時に無理に仕事をするのではなく、積極的に仮眠を取ることもありなのではないか、ということで実際に実証実験をして、その効果について確かめたかったというところですね。
瀧口:私、先日三菱地所さんの仮眠室を拝見させていただきましたので、そちらのVTRをご覧いただきたいと思います。
瀧口:三菱地所のオフィスに新しく仮眠室ができたということなので、行ってみたいと思います。開放的な空間が広がっていますね。ジムのマシンのようなものが置いてあります。
そしてこちらです。看板に星のマークがついていますね。ここが仮眠室になっているということですので、行ってみましょう。いくつかドアがあるのですが、こちらの扉を開けてみたいと思います。
瀧口:失礼します。すごい、ソファーが置いてあります。大きめのソファーですね。ではこちら寝てみたいと思います。
瀧口:(ソファは)すごいフカフカです。しかもちょっと揺れる感じになっていますね。揺れが気持ちいいです。これは熟睡できそうです。
奥平:こういったブースがいくつかあるんですか?
根神:そうですね。男性が3ブース、女性が3ブース。計6ブース用意しています。
奥平:こちらは予約をして使うのですか?
根神:はい。実際には予約して使っていただく流れです。
奥平:例えばここで4時間寝たらまずいわけですよね。
根神:この辺りの仮眠に対する知識は、ニューロスペースさんにもご協力いただいて正しい知識を社員には伝えていますが、大体15分から20分くらいを推奨していて、長くても30分くらいまでということで、仮眠室の利用を社員に促しています。
奥平:逆にそれ以上は予約できないようになっているんですか?
根神:予約自体はできてしまいますが、運用の中でできないように言っています。
奥平:先ほど伺った実証実験ですが、具体的にご説明いただけますか?
根神:実証実験期間は仮眠なしの期間と仮眠ありの期間を合わせて4週間行いました。前半2週間が仮眠なしの期間、後半2週間が仮眠ありの期間です。それぞれやることは一緒ですが、会社にいる時には業務の集中度をデバイスを使って測ったり、自宅では夜の睡眠はどうだったかを、デバイスを使って計測したりしています。それぞれ2週間同じことをしまして、仮眠があるのとないのと実際に数字を出して調べました。
奥平:対象の方は何人ですか?
根神:12名の社員が参加しました。
奥平:同じ方が最初の2週間は仮眠なし、後半は仮眠ありで参加したと。
根神:そうですね。
瀧口:実際の実験結果はいかがでしたか。
根神:ジンズさんが出している「ジンズミーム」という眼鏡型のデバイスがありまして、そちらでタイピングをしている時の集中度合いの客観的なデータが計測できるものがあるのですが、それを使って測ってみたところ、仮眠を取った時の午後の生産性が上がったという結果が出ました。また、実際に実証実験に参加した社員たちのほとんどが、実感として仮眠によって午後の生産性が上がったと答えたという結果になりました。
奥平:向上というのはどういう指標で取るか分からないのですが、数値としても相当な変化があったんですか?
根神:実際に客観的な指標としてはジンズミームの集中度の数値も上がりましたし、実感としてのアンケートですので、主観的なデータとしても上がっています。
奥平:数値の方は何パーセントという数字ですか?それとも何割ということでしょうか?
根神:そうですね。劇的に上がったというわけではないですが、確実に上がったという数値は出ていました。
奥平:これによって、全社としては仮眠が制度化されて、より多くの社員の方が仮眠を取りやすい状況になっているんでしょうか。
根神:仮眠の制度としては今年の1月からできているのですが、なかなか社員が使うような環境が文化的になかったので、こういった実証実験を通して、仮眠をしてもいいよと社員に対して伝えられたら良いのかなと思っています。
瀧口:社員の方のQOLが上がると、今後長い目で見ると採用でも有利になってくることもあるのでしょうか。
根神:そうですね。やはり新しい働き方に着目してできているというところが、採用の面でも良い方向に行ってくれるといいなと思っています。
奥平:冒頭私たちのお悩み相談で終わってしまうのではと思ったんですが(笑)。生産性の向上につながっているというデータが取れているというのはビジネスの可能性を感じますよね。
瀧口:そうですね。ということで引き続き後半でもお話を伺っていきたいと思います。スリープテックは大きな可能性を秘めていますので、今後のビジネス展開について、後半は更に掘り下げていきます。