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瀧口:独創的な発想ですね。では続いてのテーマに行きたいと思います。『乗りたくても電車が来ない!』ですね。

奥平:宇宙の話からいきなり地上の話になりましたが、これはどういうことですか?

中村:これは、宇宙に行くための手段が足りないということですね。

瀧口:つまりロケットが足りないということですね。

中村:全然足りないです。我々はまだ(衛星)50機でいいのですが、世界では何百機も上げたい企業も出てきている中で、今だと大型のロケットを使わざるを得ない状況です。そうすると当然行きたい軌道というものがありますから、その辺りを考えると年間に数回くらいしか(打ち上げの)チャンスが無い状況です。

瀧口:数回ですか。

中村:そうすると何十機も上げようとすると何年かかるんだということになってしまって、これがもっと頻繁に打ち上げられる状況になってこないと、なかなか実現したいことができないという状況です。

奥平:より小さくて使い勝手がいいロケットが必要だと。

中村:我々としては小型の衛星を作ってますから、大きいロケットである必要はないんです。むしろ小さくて小回りの利くものを次から次へと打ち上げてもらえた方が都合がいいですね。

奥平:ちょうどしばらく前に堀江さんの通称ホリエモンロケット「MOMO(モモ)」がうまくいかなかった件がありましたけど、あれはどういう風にご覧になりましたか?

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中村:これは実際のサービスに到達する前にくぐり抜けなければならない難関なのかなとは思っています。実際上手くいっているように見えるスペースXでも、当初はたくさん失敗していたわけです。失敗することによって、不具合を直して、精度を上げていき、コマーシャルローンチにつなげていくという過程が必要ですので、ここで失敗したから終わりではなく、次につなげる何かを見つけていただいて、できるだけ早く商用打ち上げにつなげてほしいと思います。

奥平:一般的に成功するとみんなで拍手して、失敗するとこの世の終わりみたいになってしまいますけど、一喜一憂する必要はないと。

中村:そうですね。もちろん開発を続けるための資金や人材を確保しなければいけない事情はありますが、実際の打ち上げが成功していくまでのプロセスと考える必要があると私は思います。

瀧口:石田さんはどうご覧になりましたか?

石田:こういったことは成功か失敗かという、0か1という定義になってしまいがちですね。しかし業界用語でフルサクセスとパーシャルサクセスという表現がありまして、クリアしたい複数の項目の内、できたものもあればできなかったものもある。 そのようにとらえて次に行くことも多いので、中村さんも言ったようにイーロン・マスクも完全に成功するまで3回連続で失敗しているんですよね。その間非常に多くの人にたたかれて、絶対無理だと言われていたけど10年後の今、スペースXは素晴らしいと言われている。成功までの道のりとして、実際厳しい道だとは思いますが、みんなが通る道を(「MOMO」は)通られているということではないかと思います。

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瀧口:こちら円グラフが出ていますが、世界の宇宙産業の市場規模に対してロケットの打ち上げ産業というのはわずか0.6兆円なんですね。宇宙産業というと、どうしてもロケットというイメージが強いのですが、わずか0.6兆円。

奥平:衛星サービスというのは通信衛星のようなものでしょうか。

石田:そうですね。通信や放送といったものですね。

奥平:こう見ると衛星サービスが圧倒的に多いわけですね。

瀧口:中村さん、せっかくの機会ですのでロケットに関して望んでいることをお願いします。

中村:やはりベンチャーってスピード命と言われていますが、宇宙の世界でも同じです。打ち上げが無いことによってスピードが損なわれてしまう状況は避けたいので、なるべく早く、打ち上げたい時に打ち上げられるという状況を実現させたいと思っています。国内の打ち上げができるというのはすごく重要でして、例えば今回のGRUSはロシアから打ち上げるのですが、宇宙に行ってしまうのにも関わらず、ロシアに一旦輸出しなければなりません。 国内に(打ち上げる場所が)あることによって(衛星の)輸送費も安くすみますし、許可を取る必要もなくなります。エンジニアが現地作業するにしても安く済むということもありますので、メリットは大きいです。ですので、日本発の小型ロケットの頻繁な打ち上げというのが実現してほしいと本当に願っています。

瀧口:テーマが『乗りたくても電車が来ない』ということですが、電車が来ないといけないわけですね。

中村:言ってみれば我々のビジネスの中で、唯一アンコントローラブルな部分なわけです。そこがやはりボトルネックになってしまっている状態というのはいち早く解消したいと思っていますので、もう少し時間はかかると思いますが、世界的に我々が選べるような状況になるといいなと思います。

奥平:ロケットをより早く開発して成功させるために必要なものとは、これまでの議論で「ヒト・モノ・カネ」の中ではヒトなんじゃないかという印象を持ちましたが、石田さんはどうご覧になりますか。

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石田:ロケットはやはりお金もかかりますね。先ほど出てきましたデータ解析というのはソフトウェアですから、ロケットはやはり明らかにハードウエアの世界ですし、何度も何度も実験をしていかなくてはいけません。人も技術もお金もかかりますから、非常に難しい分野だと思います。ただやはり(ロケットは)宇宙産業の「一丁目一番地」なんですよね。宇宙ビジネスって宇宙に行かなければ始まらないじゃないですか。そういう意味では、そこ(ロケット)がどんどん革新していかないと、産業全体が広がらない。


今IT産業って広がっているじゃないですか。でも思い出してみると、ナローバンドの時代からブロードバンドに変わった時にバッと変わったんですよね。そういう意味では今宇宙と言うのはナローバンドの時代です。ロケットがどんどん進化してたくさん飛ぶようになれば、ブロードバンドになるわけですから、いろんな人がいろんなものを打ち上げて、いろんなデータが宇宙から来て、結果的にいろいろなビジネスができるようになっていくイメージですね。

奥平:まさにダイヤルアップ接続からADSL、光ファイバー接続が必要だということですね。そこでも振り返ると政策的な後押しと、ADSLに関して言うと孫正義さんのような企業家が力技で成し遂げたわけですよね。そこは政策と企業家、官と民と両輪という形になってくるわけですか。

石田:そうですね。民間企業は打ち上げをするためには法的な根拠が必要ですので、日本でも2017年に整備された宇宙活動法というものがあります。お金 という面では、アメリカで打ち上げの会社をやっている方はビリオネアが多いです。自分の資産を投資して、それが呼び水となって、いろんな人の資金が流入するという流れですから、おっしゃるとおり政策もお金も人も技術も必要となり、やはりいろいろ大変ですね。

瀧口:そのロケットを電車に例えるとすれば、電車は社会インフラですから、ロケットは宇宙におけるインフラという認識でよいでしょうか。

中村:まさにそうですね。ロケットがなければ宇宙に行けないわけですから。ここのベース部分が無いと我々もビジネスを広げていくのが難しくなるわけですから、基幹と言えます。先ほどのアメリカの話ではビリオネアの方が主要な役割を果たしているわけですけど、日本も2、3回失敗したくらいで続けられなくなるのでは、ロケット開発は難しいと思いますね。そこで成功するためには人なり政府なりの粘り強いサポートが必要だろうと思います。

瀧口:わかりました。中村さん、石田さんありがとうございました。

中村・石田:ありがとうございました。

瀧口:さて次回は、夏休み特別企画ということで、TechLiveX出演のゲストの方に、この夏必読の本をご紹介していただきます。奥平さんの必読の本もご紹介していただけるんですよね。

奥平:そのようですね(笑)。

瀧口:楽しみにしています。ということで、今回どうもありがとうございました。

全員:ありがとうございました。