日経電子版、日経産業新聞と連動してイノベーティブな技術やベンチャーを深掘りする、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」オリジナル番組の「日経TechLiveX」。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

官僚・大企業志向と思われがちの東大生のキャリア観が様変わりしている。学内のアントレプレナー講座が大人気となり、起業を目指す学生が増えているのだ。後編では、現役東大生やOBの起業家をゲストに招き、東大発スタートアップ企業の強みと課題を考える。

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瀧口:こんにちは。日経産業新聞、日経電子版と連携して、革新的なテクノロジーや今後成長が見込まれるスタートアップ企業に迫る「日経TechLiveX」。日経CNBCキャスターの瀧口友里奈です。そして、私と一緒に司会進行を務めていただくのは日経新聞編集委員の奥平和行さんです。奥平さん、よろしくお願いします。

奥平:よろしくお願いします。

瀧口:さて、今回は、前回に引き続き『変わるイマドキ東大生のキャリア観「東大→起業」という生き方』がテーマです。ゲストにお招きしたのは、自らも東京大学在学中に起業し大成功を収め、現在ではスタートアップ支援の活動を行っている鎌田富久さんです。鎌田さんは1961年生まれ。東京大学在学中にソフトウェアのベンチャー企業「ACCESS」を創業。世界初の携帯電話向けウェブブラウザなどを開発されました。2001年に東証マザーズ上場。2011年に代表取締役を退任の後、ベンチャー支援を行うTomyKを設立されました。鎌田さん、よろしくお願いします。

鎌田:よろしくお願いします。

瀧口:そしてもうお一方です。東京大学産学協創推進本部の菅原岳人さんにもお越しいただきました。菅原さんは2004年に東京大学大学院修士課程を終了。IBMでコンサルタントとして従事した後、2009年から産学協創推進本部インキュベーションマネージャーとして活動されています。菅原さん、よろしくお願いします。

菅原:よろしくお願いします。

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奥平:早速ですが、鎌田さんのご著書「テクノロジー・スタートアップが未来を創る」の中に、スタートアップ成功への10ステップという表がありました。読み上げたいと思います。1、やりたいことを見つける2、仲間を集める。3、全速力で開発する。4、失敗しながら学ぶ。5、チャンスをつかむ。6、資金調達。7、人材採用。8、組織をつくる。9、成長する。10、EXITしてさらなる成長。よくメディアは資金調達のところに注目しがちですが、実はそれは(ステップの)後半に位置するものだというわけですね。興味深く拝見いたしました。

鎌田:そうですね。これは昨今の特徴でもあります。ソフトウェアもハードウェアも以前に比べてコストがかからなくなりました。まず作るところからスタートできるというのが大きな特徴ですね。今は資金調達が6番目に入っていますが、以前はもう少し前の段階で必要でした。最近ではまず開発に力を入れて、世界デビューもして、ある程度注目された上で資金調達するというように、順番が逆になってきました。

瀧口:菅原さんはこの成功への10個のステップについて、どのようにご覧になりますか?

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菅原:鎌田さんのような経験者の方から、スタートアップを始めるにあたって実際に何をすればいいのかということを直接聞けることは、学生にとっては大変わかりやすいと思います。さらにいうと、4番目の「失敗しながら学ぶ」というのは、失敗してもいい、ということ。我々は失敗と呼ばずに「経験を積む」と呼んでいますが、経験を積むことがステップであることを理解すると、未経験者にとっては非常に勇気づけられる。一歩踏み出せるという変化があります。

奥平:いわゆる起業に関するグローバル・アントレプレナーシップ・モニターという国際調査を見ると、日本はリスク回避傾向が高いと出ています。失敗から学ぶというのが資金調達より上にありますが、今の学生たちは、失敗を受容できるだけの耐性がついているのでしょうか?

菅原:我々東京大学の場合には、失敗も含めて挑戦した回数こそが一番評価されるというような環境を整えております。必ずしも学生起業を推奨しているわけではありませんが、学生起業する一番のメリットは何回失敗してもいいということだと思います。限られた時間の中で、何回もチャレンジして何回も失敗して経験を積む。それが成功へ一歩近づくことだというのが、一つのモデルケースになっていると思います。