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瀧口:先日、松尾先生の研究室にお邪魔してきました。実際にここから人材が続々と輩出されているということです。松尾先生、この日は何をされていたのでしょうか?

松尾:研究室のラボミーティングをしていた日ですね。朝から何時間もミーティングをするのですが、学生が交代で進捗を報告する日になります。

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瀧口:この中には起業されている方もいらっしゃいますか?

松尾:そうですね。研究室の学生の中には起業している人もたくさんいます。起業して会社を大きくしているような先輩もいますから、見習って起業する人はどんどんと増えていますね。

(松尾研究室からは多くの起業家が巣立っている)

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田村:個人の成績や不動産の評価、自動車の評価などの過程に必要な作業、計算をAIで行っていくのがメイン事業です。

(Q・起業の動機は?)

田村:昔から日本でトップレベルの資産家になりたいと思っていました。松尾研究室でAIを始めたのも、金融でトレードが得意だったので、もっと勝てるようにAIという武器を使おうと思って始めました。ただトレードで投資というのは自分の資産に対してパーセンテージ分しか上がっていかないので、続けていても限度があると思い、もっと大きくなるために起業しました。伸びしろをもっと上げていくことが当面の目標です。

安田:最近、東大の学部生の様子を調べてみると、非常に起業マインドが高まっていますよね。僕が学生の頃は、もちろん学部は違いますけど全くありませんでした。おそらく松尾さんが学生の頃の工学部でもなかったと思いますが、要因は何でしょうか。何かきっかけはありますか?

松尾:徐々に(状況が)変化しているように感じています。10年ぐらい前は起業しようかと思いながらも大企業に就職する学生が大半でしたが、5年ぐらい前から大企業に就職しても1、2年で辞めて研究室に戻ってくる学生が増えてきました。そういった先輩を見て、そもそも大企業に行くよりも在学中に起業した方がいいと思う学生が増えてきている気がします。

要因としては、大企業での年功序列の世界観の中では、ディープラーニングやAIができる人が入ってもその能力を使いこなしてくれないことです。明らかに自分の能力が活かされていないということを肌身で感じるので、ここにいても仕方ないと思って(研究室に)戻ってくるというわけです。

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安田:残念ながらAI起業ブームというのは、私が教えている大阪大学ではまだ起こっていません。しかし、東大で起きているので、今後は他の大学でも起こるかもしれないですね。このブームを局所的に終わらせずに、どのようにして日本全体で起こしていくかが重要になっていくと思います。そこで一つ具体的な秘策というか、狙ってできるものではないのですが、AIバブルですね。

奥平:AIバブル。予定調和ではない感じがしますけど(笑)。

安田:どういうことかというと、インターネットの企業でAmazonやグーグルやeBay、日本でいうとソフトバンク、ライブドアなどはみんなITバブルの頃にできた会社です。あの当時インターネット関連であれば、ビジネスモデルを理解していなくても多くのお金が集まっていたというバブル状態でしたが、それが悪いことばかりだったかというと、きちんと稼げる企業や新しいビジネスモデルを生み出す企業も育てました。AIでも同じようなことが徐々に起こりつつあるかもしれませんし、(AI起業が)増えていくことによって後世に残るような、新しいプラットフォーマーが生まれるきっかけになるかもしれません。

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安田:とはいえバブルは過激だと思いますので、もう一つ具体策でいうと、「高度人材減税」です。これはAIの分野ではそこまで深刻ではないかもしれませんが、大学院を出た専門技能を持つ学生たちのために、実際に社会に出て価値を生み出していく経路を作ってあげる必要があるのではないかということです。

現状何が起きているかというと、経済学部などは典型ですが、大学院を志す人の大半は研究者を目指して入ってくる。その人たちが仮に研究者にならなかった時に、ビジネスで活躍できるかというと、なかなか受け皿がない。でも企業側の言い分もあって、もともとあまり企業向きの人は大学院に行かないと言われてしまうんですね。これを変えていく何かしらのきっかけがないと、ニワトリとタマゴの問題は解消しない。AI人材が大学にいてもなかなか(社会に)出て行かないということになりかねない。一つ強引なやり方ですけど、例えば修士課程、博士課程を出ている人を採用すると、人数や割合に応じて法人減税を行う。そういうことをやると企業としても採用するインセンティブは高まりますよね。