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安田:(日本は)先ほどの負のスパイラルから転じて、今は正のスパイラルに動きつつあるかもしれない。表で言うと、一番上の賃上げが起こり始めています。正規非正規問わず、人を雇うのは難しくなっている。そうなると、遅ればせながら人から資本です。まさに機はかなり熟していて、いよいよ投資をしなければいけなくなってきました。その際に重要なのは、こういったAI系については設備に投資するだけでは生産性が上がらないので、導入したAIをきちんと活用できる人にも投資をしなくてはいけないということです。

そこでAIとものづくりのマッチングにつながっていくわけです。これはデータからも分かっていることですが、今までずっと足りなかった日本経済の投資が最近増え始めています。今後はAI投資も徐々に増えてくるだろうと思われます。その際にAIを使いこなすための人にも投資するということですね。これにより生産性が上がれば好循環がどんどん強くなっていくかもしれない。このチャンスを逃してしまうとまずいかもしれないので、今は非常に良いタイミングであると言えます。
奥平:(日本で)人不足や賃金が上がっているという話ですが、2020年に向けて一時的な要因もありますよね。その後は景気がどうなるか分からないという中で、短期的にこのサイクルに持ち込まなくてはいけないという要素もあるのでしょうか?

安田:これからどうなるかはやや不透明ですが、働き方改革が進んでいくと、時間あたりの労働コストも高まるので、より投資をしていこうというプレッシャーがかかりますよね。

瀧口:AIを使いこなす労働者をきちんと育てていくというお話がありましたが、実際にはどのような技術が求められるのでしょうか?例えば統計学を理解していなくてはいけないとか、データリテラシーがなくてはいけないなど、具体的に教えて下さい。

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安田:全ての人が統計分析やディープラーニングのようなものを理解するのは難しいと思います。そこはリアルな世界に強くて現場をよく知る人と、ヴァーチャルな世界に強くてアルゴリズムを知っている人を、いかに有機的にマッチングできるかということが勝負だと思います。そもそも経済学の父のアダム・スミスも分業の利益をうたっているので、一人で(全てを)やるのは逆に効率が悪いと言えます。

奥平:スーパーマンは無理だけど、団結すれば可能かもしれないと。

安田:グーグルやFacebookは、いろんな分野の専門家を高いお給料を出して呼んでくる。良い技術があれば、それを買収していち早く囲い込んでしまうということをやってきて大きくなっています。しかし、同じような形で日本がプラットフォームを築けるかというと、おそらくそれは難しいというのが僕の考えです。

瀧口:今の安田先生のお話を受けて、松尾先生はどうお考えでしょうか。

松尾:若い人は基本的にディープラーニングをやるといいと思いますね。インターネットが出てきた時も、当時インターネットをしていたことが後々大きく活きています。今のインターネットの主要な国内の企業の中心にいる人は、やはり90年代後半にインターネットを使っていた人たちですね。

ディープラーニングも同じで、(今は)技術的な変革期にあって、若い人の能力が活きやすいので、ぼくはどんどんやっていくべきだと思います。そういう人がものづくりの年功序列の世界観で、知識やスキルを蓄積してきたような企業と組むことによって、価値が最大化できるのではないかと思いますね。