奥平:日本は現場という強みがあるということで、非常にバラ色な気もしますが、一方でヴァーチャルな人たちも現場に進出しようとしていますよね。例えばグーグルも自ら自動運転の開発に乗り出したり、Amazonがリアルなスーパーを買収したり。私も先日アメリカへ行きましたが、Amazonが買収したホールフーズというスーパーの店頭が相当Amazon化されていました。おそらくこれからデータ活用を進めていくために、リアルなお客さんとヴァーチャルなデータを紐づけしようとしているのだろうという印象を持ちました。こうなると日本の現場やリアルというのは、おそらくこのままだと勝てませんよね。

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安田:Amazonのような大企業が主導してAIをリアルな世界に広げていくのは一つのやり方ですね。アメリカ流のやり方。日本はおっしゃるようにソフトウェアの部分でそこまでの巨大企業が無いので難しいかもしれない。となるとリアルな店舗やビジネスとヴァーチャルなものとのマッチングが非常に重要になってくると思いますね。日本オリジナルのマッチングの仕組みやプラットフォームのようなものが出来ていかないと、逆に苦しい状況になってしまいます。

奥平:この良いストーリーに持ち込めないわけですよね。

瀧口:グーグルはイギリスのディープマインドという人工知能の会社を買収したり、買収で大きくなっているような企業だと思いますが、日本のリアルな産業にも進出してくる事態も考えられますか?

松尾:もちろんそれはあります。一言で言うとクールなものから進出してくると思いますね。

奥平:具体的に言うと、どういうものでしょうか。

松尾:車などはクールな部類ですね。

瀧口:クールというのはどういう意味ですか?ホットとクールでしょうか。

奥平:かっこいいという意味のクールですか?

松尾:例えばグーグルは農業用ロボットに進出する可能性はあまりない。食品加工ロボットもおそらく手を出さない。あまりかっこよくないですよね。

奥平:かっこいいという意味のクールですね。

松尾:何と言いますか、事業領域にどっぷり漬かりこまなくてはいけないものは、あまりグーグル的では無い。領域とは関係なく、汎用の技術で収益率が高いもの、自動車や医療などですね。そのあたりは進出してくると思いますが、もっと泥臭いところはなかなか手を出さないと思います。もちろん様々なメリットデメリットはありますが。

安田:シリコンバレーの人たちはあまり泥臭い所に入ってこようとしないですよね。逆に日本はそういう所に強みがあるのかなと期待しています。

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松尾:そもそも負け戦なので、非常に厳しいということを前提とした上でのお話ですが、そのあたりの泥臭い所や現場の熟練というのは日本の競争力があります。日本の機械メーカーでも、モジュール化してしまって誰でも作れるようになると、一気にコスト競争になり、負けてしまいます。いまだに(日本の)強みが残る所は、どこかすり合わせで上手に作らないと最終製品の品質が落ちてしまう、という繊細な部分を得意とするような所です。今後はそこを起点にして、ソフトウェア側のやり方を上手く導入していく必要があります。

ソフトウェア側のやり方というのは、若い人が主体となり、改善をし続けていくというシリコンバレーで行われているやり方ですね。そう考えるとハードウェアが得意でソフトウェアが苦手な日本企業と、ハードウェアが苦手でソフトウェアが得意なシリコンバレー企業との戦いになっていくと思います。普通に考えるとハードウェアが得意な方が、蓄積が必要なのでおそらく有利だと思うのですが、そもそも負け戦という状況を考えると、日本は相当頑張らないと勝負にならないと思いますね。

奥平:クールという観点は非常に面白いと思うのですが、その文脈で言うと自動運転の戦いについて、日本は苦戦すると思いますか。

松尾:苦戦すると思います。

奥平:それは我が国の基幹産業として由々しき事態ですね。

松尾:客観的に見ると、かなり厳しい戦いだと思います。

瀧口:安田さんはクールという言葉はどう捉えられますか?

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安田:いかにも西海岸のお兄ちゃんたちが考えそうなことですよね(笑)。
自動運転に関しては、僕はやや松尾さんと見方が違っていて、もちろん厳しい負け戦かもしれませんが、結局自動運転もデータをどのように集めるかというのが重要だと思っています。グーグルも自動運転を開発する時には無人で車を走らせますが、数台ですよね。集められるデータにかなり制約がある。

それでもあれだけの自動走行にたどり着いているので、技術は立派だと思うのですが、例えばトヨタやドイツ系の企業のように、すでに自動車メーカーとして圧倒的なシェアを持っている企業からすると、データを集めるのはそこまで難しくないかもしれない。そのデータがきちんと集まって、自動運転技術がある程度のものが仕上がってくれば、乗せる車体、ハードウェアについては非常に蓄積があるわけですよね。

最終的に消費者がどちらを選ぶかです。消費者が自動運転機能付きの車を選ぶときに、トヨタのボディに価値を重く置くのであれば、上にのる技術は究極的にはトヨタの自動運転機能でも、グーグルの自動運転機能でもどちらでもよいかもしれない。自動運転の技術がある意味コモディティ化して安くなり、車のボディ自体が価値を持つのであれば(トヨタは)勝ち残れますよね。そうではなくて自動運転が決定的に重要で、どのボディに乗るかはほとんど価値がないということになってくると非常に厳しい。

したがって、日本系の企業というのはものづくりを活かせるようなゲームに変えていかなくてはいけないのですが、それが出来るかというところですね。トヨタさんは面白い試みをしている気はしますが、今後の動きを見ていかないと何とも言えないですね。

奥平:お話を伺っていると、日本の先行きに関しては先ほどバラ色と申し上げましたけど、むしろ暗雲がただよっているようですね。これを「どげんかせんといかん」ということで、提言をいただきたいと思うのですが、残り時間わずかとなりました。本日はタイトルだけご紹介いただいて議論は次回深めることにいたします。では松尾さんからお願いします。

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松尾:問いはディープラーニング時代のプラットフォーマーは何かということです。今、インターネットの世界で例えて言うならば大体1998年、20年位前だと思っていただくと分かりやすいと思います。グーグルが出来たばかり、Amazonはまだ大きくない、Facebookもまだ存在していない状況で、プラットフォーマーが出てきたわけですよね。ではディープラーニング時代の新しいプラットフォーマーはどういう企業かということです。僕は後から振り返った時に、この時代から出てきてあっという間に世界を席巻するような大企業になったよね、というような企業が何社も現れると思っています。こういった企業がどのような企業なのか。ヒントは二つありまして、「熟練の眼のスコア化」と「中心作業の自動化」ですね。

奥平:詳しく伺いたいところですが、時間が押してしまうので本日はここまでにしておきます。

瀧口:では安田さんお願いします。

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安田:「AIとものづくりのマッチング」ですね。日本企業はリアルな世界に強みがありますので、(それを)どうやってヴァーチャル、AIの世界とつなげていくか。つなぎ方はいろいろあると思いますので、具体的な施策については次回お話したいと思います。

奥平:「言うは易く、行うは難し」の世界ですので、次回ぜひ詳しくお伺いしたいと思います。

瀧口:松尾先生、安田先生、どうもありがとうございました。