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日本のAI研究をリードする松尾豊・東京大学特任准教授と気鋭の経済学者、安田洋祐・大阪大学准教授が初顔合わせしてAIについて徹底議論する「スペシャル企画」。第2回はAI・ディープラーニングがなぜ今になって飛躍的に発展したのか、どんな革命を今後引き起こすのか――について考える。

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瀧口:こんにちは。日経CNBCキャスターの瀧口友里奈です。そして、私と一緒に司会進行していただくのは、日本経済新聞編集委員の奥平和行さんです。奥平さん、よろしくお願いします。

奥平:よろしくお願いします。

瀧口:さて、前編に続き、AIウォーズ ニッポン復活の未来戦略〜グーグル、FBに勝つ秘策~ということでお届けします。奥平さん、1回目がとても盛り上がりました。

奥平:盛り上がりすぎまして、もっともっとお話をしたいということで緊急発表があります。前回、"前編"とお伝えしましたが、4 回シリーズになります。今回は、4 回シリーズの2回目ということで、引き続き、お話を進めたいと思います。

瀧口:引き続き、松尾先生、安田先生にどしどしお話をお伺いしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

松尾・安田:よろしくお願いします。

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<松尾豊プロフィール>
2002年東京大学大学院博士課程修了。
産業技術総合研究所研究員、スタンフォード大学客員研究員を経て、2007年より東京大学大学院工学系研究科准教授、特任准教授。
人工知能とウェブ、ビジネスモデルに関する研究を行う。

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<安田洋祐プロフィール>
2002年東京大学経済学部を卒業し、2007年プリンストン大学Ph.D.
政策研究大学院大学助教授を経て2014年から大阪大学経済学部准教授。
経済理論、ゲーム理論を研究。

<AIとヒトはどう違うか>

奥平:前回、松尾先生から本当にわかりやすくコンパクトに、AIとは、ディープラーニングとは、というお話を伺いました。当然、技術と社会というのは両輪の関係にあって、互いに影響を与えていくことになると思います。安田先生、ご専門の経済学的観点から、現状をどう見ていらっしゃるのかお話を伺えますか?

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安田:その視点もいいのですが、前回、松尾さんがディープラーニングの深さについてお話されましたが、僕はまだ、その深さについて聞ききれていないんです。この前、人工知能学会という学会に、僕自身の発表で行ったのですが、そこで松尾さんがご講演をされていて、非常に印象に残ることをおっしゃられていたんですね。一言でいうと、AIとヒトがどう違うか。AIというのは記号処理のプロセスに非常に長けている。一方、人間というのはそこに認知運動系のプロセスもあって動いている。そういう大きな違いがある。そこで、この辺りのお話をもう少し伺えると、AIとヒトがどう違うのかということがわかりやすい。経済の問題から見ても、今後、AIがどこまでヒトに近づくか、あるいはヒトの仕事に置き換わるかということは重要になってくるので、そこをもう少し深いお話をお願いしたいです。

奥平:では、記号処理、認知、運動と3つありますが、その関係からまずお願いします。

<人間の知能はどうなっているか>

松尾:まず、人間は頭がよく、他の動物と比べて知能が高いからこれだけ繁栄しているわけであります。では、他の動物と一番違うところはどこだと思われますか?

瀧口:人間と違うところ・・・言葉で意思疎通ができる、伝えられるところですか?

松尾:そうなんです。言葉がやはり知能の本質的な力だろうというのは、人工知能学者も認知科学の進化生物学者もみんなが思うことなんです。面白いのは、鳥の中には、あるシンボルがある事象を表す個体がいたり、イルカやオラウータンも・・・。

安田:コミュニケートしているような動物がいるということですね。

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松尾:そうなんです。人間の場合は、言葉のレベルも非常に高い。では、人間の知能がそもそもどうなっているかということを考えます。ちょっとわかりにくい図ですが、ほかの動物も人間もベースになるものは一緒です。これは認知・運動系と僕は呼んでいますが、環境の中から何かを認知し、それによって適応的に行動を決めるということです。

奥平:認知とは、見る、聞く、触るということですね。